海は燃えている イタリア最南端の小さな島の作品情報・感想・評価

海は燃えている イタリア最南端の小さな島2016年製作の映画)

Fuocoammare/Fire at Sea

上映日:2017年02月11日

製作国:

上映時間:114分

3.6

あらすじ

イタリア最南端、北アフリカにもっとも近いヨーロッパ領の小さな島、ランペドゥーサ島。12歳の少年サムエレは友だちと手作りのパチンコで遊び、島の人々はどこにでもある日々を生きている。しかし、この島にはもうひとつの顔がある。アフリカや中東から命がけで地中海を渡り、ヨーロッパを目指す多くの難民・移民の玄関口なのだ。本作は、『ローマ環状線 めぐりゆく人生たち』(ヴェネチア映画祭金獅子賞受賞)のジャンフラン…

イタリア最南端、北アフリカにもっとも近いヨーロッパ領の小さな島、ランペドゥーサ島。12歳の少年サムエレは友だちと手作りのパチンコで遊び、島の人々はどこにでもある日々を生きている。しかし、この島にはもうひとつの顔がある。アフリカや中東から命がけで地中海を渡り、ヨーロッパを目指す多くの難民・移民の玄関口なのだ。本作は、『ローマ環状線 めぐりゆく人生たち』(ヴェネチア映画祭金獅子賞受賞)のジャンフランコ・ロージ監督が、温かくも冷静な眼差しで島の日常を見据えるドキュメンタリー。世界の縮図が浮かび上がってくる、静かなる衝撃作。

「海は燃えている イタリア最南端の小さな島」に投稿された感想・評価

イタリア最南端に位置するランペドゥーサ島。この島は北アフリカにも接しており、地中海を通じて、アフリカからの難民たちにとってはこの島はヨーロッパへの玄関口でもあった。この島に住む少年サムエレは、友達とパチンコ作りに夢中な12歳の少年。自由奔放に生きる彼の傍で、命をかけて、平和と自由のために決死の覚悟で海を渡ってくる人々もいた。この島を舞台に、島民の日常や過酷な旅を経て島にたどり着いた難民・移民の姿を映し出す。。「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」のジャンフランコ・ロージ監督による第66回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞のドキュメンタリー。

ヨーロッパでは極右政党が大きく躍進している昨今ですが、先日行われたフランス大統領選挙でもリベラル派の候補が極右政党の候補を破るなど、まだ中世から続く自由と平和のヨーロッパの魂は死んでいないのかなと思います。ですが、アフリカやアラブで引き起こっている長期の内戦やテロは大量の難民を生み出し、それが流れ込むヨーロッパではそうした難民たちの救済で政府の財政が逼迫し、経済的にも、特に低所得者層を中心に職を奪われるなど、活発化しない世界経済の中で、なかなか厳しいのも事実なのです。遠い島国である日本ではありますが、北朝鮮情勢がここ数ヶ月厳しい局面を迎えていたことなど、もし仮に朝鮮半島で有事が発生したときに、ミサイル攻撃などの直接的な被害がなくとも、内戦状態に発展すれば日本海を越えて、難民が流入して来る危機がないとも言えないのです。決して対岸の火事ではなく、私たちの日常に難民問題が降り掛かったら、、という想定で観ていると、本作は非常に心揺さぶられるものがあるかと思います。

本作はランペドゥーサ島の二面性をドキュメンタリーとして描いていきます。1つは地中海の穏やかな気候と、南イタリアの風が吹いてきそうな心地よい島の人々と風景が、少年サムエレの毎日として描かれる。ここにはヨーロッパの人たちの平和な日常しかないのです。対象的に描かれるのは、その平和な毎日のほぼ数海里先の海の上で起こっている、アフリカからの難民船に起こる悲劇。様々な弾圧や経済的な困窮した人々が、なけなしのお金を払い、定員オーバーなボロ船に押し込まれながら、地中海を北へ上ってくる命をかけた旅。お金を払え、風が通る船上の席を得れた人はまだしも、狭く暑さと湿気しかない船倉に押し込まれた人々は、長い航海の中で身を削り、熱中症や脱水状態に陥り、死に至る人たちもいるという惨状。イタリアの海上警備隊に発見、救出される様を淡々をカメラは追っていきますが、やせ細り、息も絶え絶えな人の姿は目を覆いたくなるほど。こうした現実を克明に捉える映像は見応えというか、観る者を凍りつかせます。

しかし、本作のちょっとおかしなところは、こうした二面的な映像構成になぜしたのかというところ。少年サムエレの毎日が特に意味を持たないので、幸運にも慎ましく生きているヨーロッパの人たちと、悲劇的なアフリカ難民という、この構図に何のメッセージがあるのかということを感じてしまうのです。金熊賞作品なので、芸術的に優れているのかもしれませんが、悲しいながらも運命として違うのであるから、意図的に対立軸を見出すことに何かおかしな違和感を感じてしまうのです。ただ、現実を映し出すドキュメンタリーとして、もっと徹するべきなのではなかったのかというのが、うがった僕の見方なのかもしれません。
カラン

カランの感想・評価

4.5
イタリアの難民問題を巡るドキュメント。

このドキュメントは、イタリアの ランペドゥーサ島を舞台にして、中東、アフリカからの難民が、船にぎっしり乗って、海を渡ってくる。

ぎっしり乗っているので、もし誰かが病気になって、それが伝染性ならば、皆んな死んでしまうだろう、というぐらい、ぎっしりと船に乗っている。

ぎっしり乗った船が、座礁をしたり、動力系が故障することもあり、地中海の只中で、初めて海を見たという人たちを乗せた船が、転覆することもある。

乗り過ぎだ。この手の難民を、運ぶ業者がいるようだ。手引きして闇に隠れて、出発するこうした業者は、お金を少ししか払えない人は、船倉に詰め込まれる。不具合があれば、何らかの保証を受けられるような格安航空券とは違う。詰め込まれる側も詰め込む側も、命の保証すらない。

皆んな事情がある。戦争とか宗教とか。そして、船を使っている密輸業者も、商売としてやっているのだから、たぶん、この非常にリスクの高い大移動の決行に加担しているのだ。

このドキュメントは上記の移民の物語と、ランペドゥーサ島の島民たちの素朴な生活を対比させながら描く。ラジオのDJが、島の人の想いを運ぶ仕事をしており、子供たちは、他のどことも変わらない遊びをしている。しかし船は上手に扱えるようにならなければならないようだ。


一番衝撃を受けた場面。海に船が浮かんでいるのだが、人影はない。カメラが船内を捉えると、雑然とした、ゴミの山が映る。よく分からない。何度も見返したが、人間の手とか、足とか、首すじとかのように見える。しかし、私にはうまく分からない。こんな風に人間の身体?が、乱雑に散らばっているなんて。あまりにシュール過ぎて、これはよく戦争映画や大量虐殺の映画で人がたくさん死んでいる場面と同じようなものなんだ、などとはにわかには思えない。それほど、disorderly、いやchaoticな光景である。

素朴に生きる人たちと、脱出して生き延びようとする人たち。

エンジンのそばで寝ていたのか、燃料を被って化学熱傷(化学物質で火傷のように組織が損傷を受ける)になる者がでるまで、さらには妊婦まで、船内に詰め込んで、たぶん根拠なんてありはしないが、いささか陰鬱な希望を運ぶ船と、がらーんと、ゴミと明るく船内を浮遊するホコリと死体だけになって漂流する船。
あゆみ

あゆみの感想・評価

4.5
よく撮れたなと感嘆するシーン多数。重圧で心が押し潰されそうな二時間だった。
死体が山のように積み重なる船倉や、救助された移民が目薬を血の涙のように流すカットなど。
夜明けとともに、ヘリの格納庫が開いていく場面の美しさも。黒々とした夜の海の中を差す孤独な光も。
常にフィックスかゆっくりすぎるパーンで撮られていて、淡々と、だけど強烈な映像の数々に、茫然と魅せられた。

救助された黒人男性が歌うように語った。その独白のような、「生」を叫ぶようなラップを、息を止めて全身で聞いた。
紛争で多くの仲間が死んだ。殺され、犯された。安全に暮らすことができなくなったから、祖国を捨てた。命からがら逃げ出し、砂漠を渡った。水もない。途中で多くの仲間が死んだ。
リビアに着くと収監された。リビアの監獄はひどい場所だった。常に暴力を受け、水も食事もなかった。3年収監された仲間がたくさんいた。6年収監された仲間がたくさんいた。耐え続け、監獄を命がけで逃げ出した。一か八かの賭けにでて、海をわたることにした。多くの船が沈み、多くの仲間が死んだ。海は人間が渡る場所じゃない。人間なんかに渡れるようなものじゃない。でも俺たちは、一週間海を渡り、たまたま幸運にもイタリア最南端の島まで辿り着いた。
俺は生きている。生きている。生きている。


救助された移民たちが小さなスペースでサッカーをしているシーンで涙が出そうだった。皆、「シリア!シリア!」などと、ワールドカップのような雰囲気で母国の名前を叫び応援する。
逃げ出した先の国で、祖国の名前を叫ぶ。こんなにも理不尽で悲しいことがあっていいのか。好きで国を捨てる人なんてどこにもいない。

泣きたかったけど、泣いてはいけないと思った。涙で、悔しさを晴らしてはいけないと思った。
何もかもはできないけど、何だったらできるのか、向き合いたい。
TICTAC

TICTACの感想・評価

-
難民問題とかよく言うし映画のテーマにもなったりすることが多いけど、この映画でまじまじと本物を見せられた気がする。

100人以上が小さな船にぎゅうぎゅうに詰められて、水や食料を乗せる場所もなく、1週間も飲まず食わず。船の下の層では息もできないくらい空気が入ってこない。暑い。脱水症状。感染症。

対して、島のある子供の様子を演出も加えながら映す。パチンコも自分で作る。桟橋で胃を鍛える。ああいう島で育つのと、東京で育つのとでは色んな違いがあるんだろうな。想像力が培われるというか。
MasayaJoe

MasayaJoeの感想・評価

4.3
救助された直後の顔と嗚咽。「今、どんなお気持ちですか?」なんて聞けるわけない。心のうちにある壮絶な思いを想像するだけで精一杯である。フィクションの作り手は現実に敗北する。なぜ彼らは今ここにいるのか?彼らの過去は?難民となった原因は?彼らの背景を描く展開だっていくらでも考えつくだろう。しかしそれこそ物語化に繋がってしまう。安易に物語って現実を捻じ曲げてはいけない、そうした危機感と覚悟が映画の背後にあるような気がした。
目の前にあるものにただ目を向けて、彼らの顔のシワや涙、唇の色を見る。観客にはそれが求められている気がする。画面を信じること。言葉ではなく。まして物語でもない。勇気をもって目の前の対象を見つめること。そんな映画だと思った。
ヨーロッパの難民危機に揺れるイタリア領最南端の島「ランペドゥーザ島」で撮影されたドキュメンタリー。漁師の子である12歳の少年と到着した難民たちを治療する医者を中心に撮影されている——。

ドキュメンタリーは、島の生活に焦点を当てた少年のパートと、難民のパートで進んでいく。島の生活は決して裕福ではないが、それ以上に難民たちの現実は想像を絶するほどに劣悪だ。難民たちは、小さな船に満員電車の様な状態で、アフリカから何週間もかけて、イタリアへやってくる。途中で、多くが命を落とす…。

本作は、ドキュメンタリーとして、第66回ベルリン国際映画祭で、金熊賞に輝いている。しかし、開始数分で感じたのは「これは本当にドキュメンタリーなのかな?」だった。特に少年パートは、まるでストーリー仕立ての映画を観ているような印象を持った。ドキュメンタリーとしてのリアリティは薄かったが、その分、見せたいことがしっかり整理されていて、良くも悪くも分かり易かったが。

一方で、監督による意図的な印象操作はないように思えた。島と移民たちの現実を見せて、どう感じるかは、観る者に完全に委ねている。ニュースの報道以上に、ニュートラルな視点だったのは、好感が持てた。(※マイケル・ムーア監督を批判しているのではない。あれはあれで良いと思う)

映像表現はドキュメンタリーらしく無かったが、難民の素顔はしっかり映っていた。ジャンフランコ・ロージ監督はアフリカ北部のエリトリア出身なので、ここまで撮れたのではないかと思う。
YukiAzuma

YukiAzumaの感想・評価

3.3
深刻な移民の現状と島の少年の生活。1つの島で交わることのない2つの現実が描かれているわけだが、作品の構成のせいかあまり引き込まれず…
苦しくもいい映画だった
ysak

ysakの感想・評価

3.4
イタリア最南端の島の二つの顔を静謐に描いたドキュメンタリー。なんだけど、特に住民のシーンはかなり仕込み度高めで、フィクションとの狭間。難民というテーマは地政学的にモラトリアム長かった日本だけど、そろそろ向き合う時期だとは思う。
>|