えんさん

未来よ こんにちはのえんさんのレビュー・感想・評価

未来よ こんにちは(2016年製作の映画)
3.0
パリの高校で哲学を教えている50代後半の女性ナタリーは、忙しいながらも充実した日々を送っていた。2人の子どもたちはもう独立し、同じ哲学教師の夫ハインツとともに何不自由ない生活。ただ1つ頭を悩ませていたのは、元女優だが、最近少し精神が混乱気味の母親の介護の問題だけだった。しかし突然、夫から離婚を告げられ、生活は一変する。問題児であった母は他界し、順調だった仕事も停滞ししてくる。気付けばおひとり様となっていたナタリーは、才能あふれる教え子・ファビアンが仲間と暮らしているアルプスへと向かうのだが。。。「EDEN エデン」のミア・ハンセン=ラブ監督による第66回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作。主演は「アスファルト」のイザベル・ユペール。

フランス、パリを中心に、仕事でも、家庭でも幸せなはずだった中年女性の人生リセット劇。1つの映画作品としてはまとまりがあるものの、そんなに驚くことが起きない普通な作品と思いましたが、僕は別の視点でいいなーと思うことが本作ではありました。それは主人公ナタリーのパリでの生き方。彼女が夫ハインツと住んでいるアパートも素敵だし、パリの都会と自然が同居している空間もいいし、彼女が教育者として学校で教師として活動したり、本に囲まれながら、その中の思想について研究していたりなどの姿も含め、世代も、男女という性別差もありますが、彼女のような生き方をしたいな、、と素直に思えてしまった作品なのです。僕も昨年(2016年)から京都に住んでいて、前に住んでいたときも含めて、5年位住んでいることになりますが、京都の都会でもあり、田舎でもあるところや、古きも新しきも含めて、いろいろな文化や素敵なお店が並んでいるところなど、パリとはいわないまでも、どこか通じるところもあり、自分の生き方も彼女のようなスタイルに是非していきたいと思った次第。映画を観ながら、違う心のツボをグイグイと刺激されていました。

という他の面に目がいってしまった作品ではありますが、作品としてもスッキリと観れる小品だと思います。主演のイザベル・ユペールは今年のアカデミーにも主演女優賞にノミネートされるなど、カトリーヌ・ドヌーヴやエマニュエル・ユペールの後に続く、味の出てきたベテラン女優になってきたと思います。僕の心を捉えた、パリやアルプス、南仏の別荘など、フランスの自然をも感じ取れるカメラワークは、スクリーンからそよ風が吹いてくるような心地よさをも感じます。映画は基本、物語やお話ベースで観てしまうのですが、これほどまでに雰囲気に魅了される作品も久しぶりだなと思いました。