あい

メットガラ ドレスをまとった美術館のあいのレビュー・感想・評価

4.0
世界随一の美術館、メトロポリタン美術館でのファッションイベント「メットガラ」。
華やかな舞台の様子と、またアナ・ウィンターの伝説を上塗りする派手な映画かと思っていたら全然違った。

予想外にこの映画の主役になるのは、メトロポリタン美術館服飾部のキュレーター、アンドリュー。

彼の「議論は怖くない。美術館は挑発的でなければ」という言葉にとてつもなく痺れた。
日本のキュレーターからは聞けない言葉だと思う。

「メットガラ」での収入は、その年の美術館の運営資金になる。
「自分たちが関わる世界を、自分たちの手で良くしていきたい」という想いが、「アート」とか「ポップカルチャー」とか、あるいは「美術展」と「商業イベント」みたいな枠を壊してクロスオーバーしていく様子がなんとも羨ましくて素敵だと思った。

ファッションはアートとしてまだ認められていない、というもどかしさや悔しさを乗り越えるためには、大衆からそれを遠ざけてさも高尚なもののように見せるのではだめなのだな。

アナ・ウィンターのカリスマ性、名だたるデザイナーや女優、俳優、モデルたちの参加によるプロモーション効果ももちろん人集めに必要なことだけれど、その前提にある「展示」と「イベント」に向けられた熱量の源は、作家と作品、そしてなによりファッションそのものへのリスペクトなんだということが、仕掛ける人たちの言動からひしひしと伝わってきて胸が熱くなる。


個人的には「写真はアートたり得るか?」という議論が未だに尽きない業界に身を置く人間として、「うらやましい〜」とばかりは言ってられないドキュメンタリーだった。
よいです。
あい

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