チッコーネ

ある戦慄のチッコーネのレビュー・感想・評価

ある戦慄(1967年製作の映画)
3.0
電車という密室に暴力、差別、そして不快感が充満する作品。
中産階級のヘテロ白人に巣食う悪意の権化のようなサイコパス2人組が、内心に不満を抱えるそこそこ善良で、生活にがんじがらめとなった人々を拷問にかけていく。

しかし前半部分には、60年代特有の非凡のセンスが横溢。特に人物ふたりを収めるカットの撮り方は構図がシャープで、目を見張るほどだ。デティールの描き方もシニシズムに満ちて小気味良いのだが、本腰が入り始めた中盤から、ユーモアセンスは完全に車外へ置き去りとなってしまう。

ラース・フォン・トリアーやミヒャエル・ハネケのプロトタイプのような作品で、生真面目な送り手の裡には、やり場のない怒りや絶望がとぐろを巻いている。