ある戦慄の作品情報・感想・評価

「ある戦慄」に投稿された感想・評価

Aika

Aikaの感想・評価

3.8
真夜中の地下鉄に乗ってきたのは粗暴なチンピラ二人組。
彼らは乗り合わせた乗客達に執拗に絡み始める。

「ゲットアウト」の居心地の悪さと
「ファニーゲーム」の得体の知れない恐怖を兼ね備えたような不快感100%ムービー。

様々な人種や年齢の乗客達。他人には決して触れられたくない、触れてはいけないところをあえて指摘し煽ってくるチンピラ達。
それに対する反応は様々だけど、共通するのは全てネガティヴな感情だということ。
怒り、妬み、失望、偽善、敗北感、無力感…こんな感情でいっぱいの車内はまるで燃料タンクのよう。緊張感漂う中、いつ誰が発火源となり爆発するのか。

クライマックスは突然やってきてカタルシスはある程度得られるものの後味は悪い。そしてオマケにもう一つ気分が悪くなるものをさりげけなく目撃させられる。観客を決して気持ち良く帰らせるつもりはないらしい。

最高に厭らしい作品。褒め言葉です。レビュー書いてるだけで思い出してイライラするほど笑

チンピラの一人は若かりし頃のマーティン・シーン。イケメンですが人間ではありません。
mtmt

mtmtの感想・評価

3.8
これは凄い映画です。凄くいいとか悪いとかもちろん美しいとかじゃなくて、メッセージ性とそして存在自体が。一瞬ハネケの「ファニーゲーム」を思い出したが、あちらより訴えかける/考えさせるものがある。より登場人物に近い立場になりうるので。これが50年前の映画か…。鑑賞というより体験という作品だった。

このレビューはネタバレを含みます

鑑賞してる最中に何度この空間を爆破してやろうと思ったことか。
あくまで心情的にね。
ファニーゲーム並の胸糞悪さ。

こんな醜い空間は本来あるべきものじゃないし
抹消するよう努力すべきこと。

これを観た後どう生きるか。
自分はこの中の誰で誰に苛立ちを覚えたか。
自分はそれで正しかったか。

IncidentはAccidentの蕾。

突然不幸の花を爆発させる。

電車という狭い密室空間に詰め込まれた人間のリアル。

弱さ✧汚さ✧狡さ✧醜悪✧臆病✧身勝手✧勇気✧
プライド✧

黒人男性のキャラからは人間のあらゆる面を感じとれて
不愉快ではあるものの一番興味深かった。

これがフィクションとして楽しめる日が来ればいい。

映画好きとしても人間やってる一人としても
見て損はない作品。
pika

pikaの感想・評価

4.5
おー!めちゃくちゃ面白い!!
見終わっても終わらない日常侵食ホラーと言うのか、この世がホラーと言うのか、半世紀前の映画なのに今のこの瞬間にも同じことが起きていても何ら不思議じゃない普遍的な人間心理や社会性などの生々しいリアルが詰まりまくってて凄い。
時代や文化を象徴しているところもあるけど50年経っていてもあんまり変わってないっつー恐ろしさにも背筋がゾクッとした。黒人の下りが特に。

自分がもしこの場にいたら!?と考えざるを得ないディテールの上手さがとにかく凄くて、誰もが彼らの状況に共感してしまうだろうし、いつか同じ状況に出くわす可能性は充分にあるとすら考えてしまったり、余計な贅肉のないスッキリとしたシンプルな話なんだけど、だからこそめちゃくちゃ生々しくて怖い。
こうやって映画で見れば他者だが自分の中にも彼らがいるというような突き放せない心理。
こんな切り口のホラーがあるとは!すげー!世界は広い!めちゃくちゃ面白い!

前半たっぷり時間をかけて電車に集まる人物たちの背景を描いていくんだけど、映像で、簡単な日常的な台詞で、仕草で、目線で「あー、こういう人いるいる!」と端的に人物描写をしてしまうさり気ない演出に見応えがあり、オープニング→タイトル→群像劇的人物紹介の構成で単純な群像劇にせずオープニングがあったからこそ先へと繋がるであろう予測という感情から緊張感を生ませているのがめちゃくちゃ面白い。
日曜の夜中2時過ぎ、明日の朝からみんな仕事、この電車を逃したら次が来るのは30分後など、それらの単語だけでその電車から降りられないという心理をスパッと共感させてしまう上手さも。
すげー良くできてて面白い!

ネットで○○が好きなら「ある戦慄」オススメ!とあって、その○○をど忘れしたまんまレンタルしてきたんだけど見終わって調べたら「ファニーゲーム」だった。なるほど納得!
身近に存在する悪意、簡単に奪われる尊厳、他者の被害は見てみぬふり、勇気は無為などの蓋をして直視したくないリアルのえぐり出されっぷりは「ファニーゲーム」よりストレートでゾゾゾとなりました。終わり方も満遍なく秀逸!すげー。
或る夜、地下鉄の同じ車両に乗り合わせた人々が、労働者の風体をした粗暴なチンピラ2人の嫌がらせに遭ってしまう恐怖を描く傑作劇。冒頭のロケ撮影で各乗客の性質を紹介するくだりや、その現実味のある会話の内容からは卑近な生活臭が漂う。近代的な都会の縮図と病理を、電車というワン・シチュエーションで見事に切り取った社会派ドラマである。
根源的でリアルな不快さを感じるような場面を赤裸々に映し出し、現代人の誰もが抱えているが、しかし認めたくない脆さ弱さを、これでもかと見せ付けられる。自分が同じ状況になったとしたら、そのとき取る行動は乗客の誰かに当てはまってしまうだろう。
夜中に電車に乗っていると、電車の中で酔っぱらいが暴れたり、調子に乗ったチンピラが隣の客に絡んでいたりする姿を目にする機会は少なくないと思う。そういう時は、そのうち静かになるだろうし誰かが注意してくれるだろうと多くの人は何も口を出さない。見かねた正義感の強い誰かが思いきって口を開くと、大抵そいつは逆ギレしてきて、注意したはずが勢いに圧されたその人は、自分が社内の注目を浴びたことに委縮し小さくなってしまう。同じ空間には、自分は関係ないと無視を決め込む奴がいるし、その振る舞いに憤っているのに立ち上がる勇気がない奴がいるし、注意したいんだけど俺は弱いから怖いからと悶々と心の中で言い訳をする奴がいるし、俺だったらもっと上手くやれたのだけどねとでも言いたげなすかし顔で事の顛末を他人事のように見ている奴がいる。誰も助けない。そうなってしまえばバカは強い。勝ち誇りながら余計に調子付き、もうそこで息を吸うだけで人間が腐っていくような瘴気のようなものを辺り構わず振りまいてくる。その空間そのものを、嫌な場所へと作り変えはじめるのだ。その手助けをしてしまっていることに誰も気が付けないままに、目的地まで腐った空気に肺を毒され続ける状況が続いてしまう。実に不健康だ。
本作では、そんなシチュエーションで露になる人間の無力感、敗北感、頼り無さ、不甲斐無さ、失望、怒りなどが容赦なくモノクロのフィルムに描写され、細かい台詞や表情、仕草まで、人というものの心の動きを実に良く観察している。
他人が嫌なことをやられていて、関われば自分も巻き込まれかねない状況を本能的に回避してしまう心理や、自分が標的にならないうちは平気な顔をしていられる危機感のなさ、権威も良識も通用しない口で言ってもわからない者を相手にして委縮してしまう非力さは、文明のなかで浮かび上がってきた人間のもつ残酷な側面だ。
実のところ、人は「他人が傷付く様子」をみたくてたまらないけど、同時に「自分が傷付くこと」を何よりも恐れているということがよくわかる。人が傷付く様子が見たいけど、自分が傷付かないようにするためには、人を傷付けないようにするしかないのだ。そうやって渋々劣情や衝動を抑えている状態を、理性とか、良識とか、社会的規範とか言って、いわゆる道徳ってことにしているのだけれど、人間が進化の果てに掴んだ道徳というものは、利己的な打算でしかなく、他人を慮るためのものではない。社会一般的に「良いこと」とされる行いは、一見悪意が無いように振舞う自制本能でしかないのである。人がモラルを守るのは自分のためだ。そんなことでは「人を傷つけられるのなら、自分が傷付いてもかまわない」というモラルハザードを起こした純度の高い悪には、とるに足らない個人の善意などで拮抗できるはずもない。そんな身も蓋もない文明批判か?いや、善意とは内的要因であるうちは意味など無いが、善行として行動で示すことによって周囲に波及するのだとする人間賛歌か。見る者に揺さぶりをかけてくる映画だ。
事なかれ主義のツケが回ってくる恐ろしさ。この映画は日本にこそ必要では?
密室の使い方に惚れ惚れ。
寿都

寿都の感想・評価

4.7
インシデントというよりじゅうぶん重大事件だと思うけど、反社会性人格者に対する、インシデントに対する対処策は社会みんなで注力していかないと。虐め問題もそうですね。
柔術の心得のある男性がひとりでも増えてくれ。ここまで最悪な条件下は今時ないだろうから、ほんの少しの勇気と知恵(周囲の男性と協力しあう、チンピラとの心理戦)と筋力を、頼もしい日本男性の皆様には日頃から用意していただきたい。多分イメトレのために映画はある。その結果の自信はオーラとなり、犯罪の抑止力になるだろうし、女性をドキドキさせてくれます。

車両内の事件よりも、前半長々と描かれる人物紹介の方もキツい。特に三組の夫婦と一組のカップル。怒りを制御できず、俯瞰的に人の気持ちを考えられない男たち。こんなシーンで、「私が大人になって耐えればいい」(最悪なのは私が悪いと洗脳されてしまうこと)という態度を女はついとってしまうが、それでいいのだろうか。間違った言動は許さない、我慢しない。それが自分のため相手のためだ。
日常で生まれた悲しみや疲れが波及し、社会の冷酷な空気となり犯罪者を育ててしまうとも考えられた。あれだよ、割れ窓理論。まずは自分に優しく。
67年にこの人間心理の掌握ぶり、感服しかできねえな。圧倒的衝撃の傑作。

他人はどこまでいっても他人というか。
たとえ同じ空間に居ようが同じ苦しみを受けて居ようが他人なんだよな。
少しでも関与すると、これ以上ハマると、自分に更に不利益がのし掛かると考えたらそりゃこの乗客みたいになるよな。
哀しいけど、兵隊さんに一瞥くれただけでもまだ人として堕ちきってないよ。もがいてた奴は確かに居るよ。

っていうのもいざ自分がこういうシチュに置かれたら当たり前だけど同じになるので、その言い訳と免罪符をレビューに書き換えてるだけですね。
私はいじめの傍観者を非難する風潮が許せなくて、傍観者も同時に被害者だと思ってるからこそ、本作の事なかれ主義を貫く人らにも同情しか出ないわけです。間違いじゃない。人間なんだもの。私なんだもの。
防衛本能。正しいと思おうぜ。そうでないとやってられねえよこの世界。

まあそもそもあのドチンピラが悪いわ(台無し)
otom

otomの感想・評価

4.6
電車の中で起こったら嫌な事ランキングでぶっちぎりで一位になるであろうシチュエーションを映画にした一本。深夜の電車に乗り合わせた人々の中にトニー•ムサンテと若き日のマーティン•シーンの最悪のDQN2人組が乗ってきたお陰でお通夜会場と化した車内。嫌な空気全開で突っ走る状況を打開したのが田舎者のオクラホマ男と云った辺りも面白い。傑作。
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