白波

ファウンドの白波のレビュー・感想・評価

ファウンド(2012年製作の映画)
3.8
B級ホラームービーをベースにした、シリアルキラーの物語。
閉塞的な空間ながら、ホラーなどの趣味と共にそれなりに生きてる少年。
それともう一つの趣味によって段々と彼の身辺がゆっくりと歪んでくるのですが、それをど頭に入れてくるのがすごいです。
そして兄が変貌するきっかけとなったであろう「Headless」。
この劇中劇がとても力入っていて、ゴア表現もやりたい放題なんですね。
本当何でそんなに?と言うくらいの密度で作っています。
そんな監督の趣味全開なB級ホラーな感じだったのですが、途中から少年の自立や社会の根深い差別やいじめ、親子の隔たりなどの問題がどんどん盛り込まれてくるんですよ。
ここら辺の絡め方もじわじわとうまいです。
またBGMですが全体的に線が細く繊細。
作品の怖さを煽ることもなく、少年の薄ら寒い心情が伝わってくるようでした。
段々と先が見えなくなり、そこに差し伸べる光があり、歪んではいるが確かな愛が感じられました。
この邂逅をきっかけに変わり始めるのですが、それと同時に加速度的に狂っていきます。
そして訪れる凶行。ここは音声のみのやり取りなのですが、序盤に「Headless」をじっくり見せつけられているので、何をしているのかぐるぐると頭に浮かんでくるんですよ。
これは本当うまい演出というか、見事な仕込みでした。
ラストの絵面も強烈なインパクトで、振り返るとものすごい熱量の意欲作でした。
本当、色々とすごかったです。





ここからネタバレ?というか小ネタ的な部分です。
◎兄貴の部屋のポスター
そうそうたるカルトムービー(DVDスルーにすらなっていないのでは?)の中、一発で目に留まった「WiLD ZERO」のポスター。
序盤かなり露出しているのですが、日本のカルトホラー作品なんですよね。これは嬉しかった。
主演は日本のガレージロックバンド、ギターウルフです。
この時点でカルトな匂いがプンプンですが、くだらなくて面白いですよ。
◎兄貴の身体
キービジュはパリッとした見事な身体ですが、それとは違い本編ではゆるゆるなのが凄い気になりましたw
たくさん賞とか撮って評価が高まってきたので、配給が気を利かせて格好良いの撮り直したんですかね?
◎劇中劇の「Headless」
このあとスピンオフで実際に作られたようですね。でも国内版DVDも出てなくて、Amazonとかで海外版のDVDが買える(売り切れ状態ですが…)くらいのようです。
トレーラーはyoutubeでも見れて、子どもがいるっぽかったり中々面白そうなので機会があれば観たいです。
※でもレビュー読むと「FOUND」の中のまんまっぽい…。





ここからネタバレ的な部分です。
自分が勝手に感じた部分なんですけど、兄は昔弟と同じような閉塞的な絶望感の中で育ってきたのでは無いでしょうか。
何処か寂しげな雰囲気に同じ趣味。
わかり過ぎるくらいわかるからこそ、彼に変わる事を進めたんじゃないかと。
それと邂逅から変わり始めた少年を、行き過ぎる前に止めたのも兄なんじゃないかと思いました。
やり返す心を与え、残った障害となる父と母を取り除き、止まれなかった自分のところまで来ないよう突き放した上での「いつかわかる、俺に感謝する」だったのかなと。
行動としては完全に狂ってはいますが、どうしても弟に対する愛を感じてしまうんです。
白波

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