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しあわせな人生の選択のEDDIEのレビュー・感想・評価

しあわせな人生の選択(2015年製作の映画)
4.0
あなたは親友が死に直面したときどう行動するだろうか。人間の尊厳について深く考えさせられ、2人の男性の友情を自然なタッチで表現する演出に心を鷲掴みに。スペインでゴヤ賞5部門受賞のヒューマンドラマ。

原題“Truman”とは何か。映画を観た人はパッと分かるのですが、未鑑賞の方には原題の意味するところはちんぷんかんぷんだと思います。
これは末期がんで余命わずかとなったフリアンという男性の飼い犬の名前。トルーマンという犬の重要性は映画を観れば自ずとわかるんですが、邦題があまりにも感動に寄せてきているのでちょっとシラけます。
むしろ『しあわせな人生の選択』が指しているのは明らかにフリアンのことだと感じさせてしまうからです。

この作品はフリアンとカナダ在住の旧友トマスがいかに固い絆で結ばれた友人なのかを、決して過去の回想など挟むことなく、現在の2人の会話や触れ合いだけで感じ取れる巧みなアプローチが素晴らしいのですが、トルーマンがタイトルになっている意味がまさにラストで深みを与えてくれるのでこの原題を崩すのはとても勿体ない。

終盤になかなか理解しがたいシーンはあるものの、総じてとても素晴らしい作品です。
余命わずか、延命治療を受けたところで治る見込みはない。ならば治療を受けずに自分の好きなように生きると。

ここまでなら他の映画でもありそうなテーマなんですが、本作でとにかく重要なのは愛犬トルーマンの存在。
フリアンは身辺整理の一つとして愛犬の貰い手を探すわけですが、なかなかいい人が見つからないんですね。相手が人であれば会話で伝えることができますが、トルーマンは飼い主に先立たれたらその悲しみを背負って生きることになります。言葉で説明しても「はい、わかった。明日からお前なしでも頑張って生きるよ」なんて犬は言えないわけですよ。
里親候補たちも問題点を抱えていて、自分の大事な愛犬をこんな人に預けていいものかとなかなか決定を下すことができません。だから本作ではトルーマンの里親探しというのがとても重要なテーマになっているんですよね。

私の感動した場面の一つにフリアンが息子ニコに会いに行くシーンがあるんですが、これ互いが強く想い合っているのが伝わるんですよね。本当は息子に病気のこと、余命わずかなことを言おうとした。だけどやっぱり上手く言えない。フリアンは伝えるべきことを伝えられなかった一方で、息子ニコを想う気持ちは正直に伝えることができました。そこで男同士の熱い抱擁。ここにはさすがにグッときましたね。

ゴヤ賞5部門受賞はダテではありません。終盤の理解しがたいシーンは理解しようとするとそういうことなのかなって考えには至るんですが、なかなか人間の心理的アプローチにおいてすんなりと受け入れることができない演出でした。
ただそこを除いても総じて素晴らしい作品で満足です。

※2020年自宅鑑賞177本目
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