さわだにわか

パブリック・ハウジングのさわだにわかのレビュー・感想・評価

パブリック・ハウジング(1997年製作の映画)
5.0
ワイズマンの映画はめんどくさいので全部スコア5でいいのですがこれの特に面白かったところはあれだな役者、みんな役者だよねすいません寝てたので役職的なやつがわからないのですが自治会のゴッドマザーみたいな人がオーラ半端ねぇの、役人とか業者とか警官なんかとの時にダークなジョークを交えた重量級駆け引きが完全にドン・コルレオーネ。


元ホームレスの人だそうですがストリートを生き抜いてきた人のタフネスと骨まで染み付いた演技性が凄まじかったので優勝ですよね。なんの優勝なのかはわからないが優勝です。

映画の前半は貧困層向けの公営住宅(住民に黒人しか見あたらないが黒人救済措置なのか、黒人居住地域だからなのかは寝ていてわからなかっ)のデンジャーな日常。軽い盗みとかドラッグとか日常茶飯事。ちょっとしたことがすぐ抗争の火種。

別の地区の住民にシマを荒らされた前述ゴッドマザーがなんとか穏便にすませようとする警官の前で「なんならギャングを雇ったっていいんだぜ…」と凄む場面、スコセッシの映画見てるのかと思った。

ちなみに会話はその後「お前ら(子供たち)、あたしが怖じ気づいたことが今までにあったかい?」「ないです…」「ないです…」「ありません…」などと続く。「火に火を向けたらダメだ、火には水ですよ」とたしなめる警官に対しては「水を撒くと後始末が大変でね。掃除人がいつも苦労してるよ」その脚本あまりに最高すぎないでしょうかいや脚本じゃない生台詞なのですが…。

後半は公営住宅のコミュニティ機能を見せていく。そこは幼児教育の場であって、老人向けカルチャーセンターでもあって、ダンスとかヒップホップとか文化創造の地でもあって、避妊講座で望まぬ妊娠と貧困の再生産(そしてエイズの蔓延)を防ぐために若い母親集めてコンドームの使い方とかどこのコンドームは質が悪いとか教えてたり、ジャンキーと更正施設を繋ぐハブになってたりする。

最後は政治とビジネスが入ってくる。政治の場としてのコミュニティ、ビジネスの場としてのコミュニティ、コミュニティがどうあるべきか自主的に選択するためのコミュニティ。自治こそアメリカ在住者の本分、民主主義の礎。

あの役人が何者なのかとか言ってることがどの程度信頼できることなのかとかは知らないがそんなことはぶっちゃけどうでもよく、次世代にコミュニティの未来を託すの図、というわけで大変力強いものであった。ワイズマン映画のラストそればっかだなという気もするが黙っておく(言ってしまった)
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