一級のサスペンスだと思うが、一方で理屈で理解できてしまう作品として物足りなさを覚えたのは事実。
とはいえ、確かに怖かった。
カメラが怖い。なぜこの位置にカメラが置かれているのか、なぜこのパンをするのか。"invisible man"というタイトルを前提にしたつくりではあるし、透明な存在を写すための方策かもしれないが、確信は持てない。そういった感覚で観客を誘うリー・ワネルの手腕は確か。
この映画の怖さが、透明な存在からの物理的暴力ではなく、あくまでも透明になる前からの心理的暴力を主軸に置いていたのは確かに現代的だし、恐怖を最大限に活用している。ただ、それがこの映画を心理に依らせているのかもしれない。
とは言え、見ていた時間はハラハラしたし、ここまで勝つ方法が見つからない敵役は久々だった。