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透明人間のblacknessfallのレビュー・感想・評価

透明人間(2019年製作の映画)
4.3
ユニバーサル・ダークユニバーズ・シリーズとして制作される予定だったのが、第一弾のトムクルーズのマミーが盛大にコケたので単独作になったやつ。

このダークユニバースが崩壊したことが良い方に作用したんじゃないかと推測される。
本格派の怪奇サスペンスホラーの格を感じる良作に仕上がってた。

あらすじは、モラハラDV野郎の高名な光学博士の元から逃亡した女性が透明人間になった男にストーキングされ罠に嵌められ窮地と恐怖の淵に追い込まれる。

シンプルにこれだけなんだけど、恐怖と不安はとっても濃密。
主人公の女性セシリアはモラハラ男の自殺を知り、逃亡先の男友達の家で徐々に心の痛手から回復していく。
しかし、何者かの気配を感じ始める。やがて気配だけではなく明確な意思を感じる現象が起こる。

これが地味だけど怖い。不自然な形で布団が剥がされる。
その布団をベッドに上げようとしたら布団の端に足跡ができ、踏まれたかのように布団が動かなくなる。
鞄に入れたはずの書類が抜き取られてる。
目眩を起こし病院に運ばれ血液検査の結果、飲んだ覚えのない薬の過剰摂取を疑われる。

文字にするとそんな大したことないけど、この地味な恐怖を不穏な効果音や音楽、不安感を煽るカメラワーク、それと何よりセシリア役のエリザベス・モスの神経症的な好演で見てる方まで見えない何かに脅かされてるような気持ちになってくる。

この透明人間男は自分から逃げた女に復讐することだけが目的。頭脳明晰で性格は邪悪で陰湿なんで、段々透明ハラスメントは苛烈さ残酷さを増していく。
それに翻弄され傷つき心身ともにボロボロになるエリザベス・モスが本当に痛々しい形相になってくる。
エリザベス・モスの演技に引き込まれて悲痛な不安感にシンクロしていくことになる。

エリザベス・モス、逆わらしべ長者式にガンガンかわいそうなことになってくるんで、見てて息苦しなってくるんだよ。
周りの人に透明男の存在を訴えるんだけど、そんな話を信じて貰えるはずもなく、逆に周りから狂人扱いされるシーンの悲痛さと絶望感はモスの演技力で痛いほど伝わってくる。

ホラーなんでゴアな描写もあることはあってかなり出来もいいけど、これの怖さはそこではなくて、自分しかその存在を知らない邪悪な者に狙われて追い詰められる絶望と恐怖なんだよ。
生理反応よりメンタルに効いてくる怖さ!
これがいやと言うほど味わえる良作だよ笑

それと、どんな高学歴で地位がある男でも透明になってやることは覗きと痴漢と言う、「インビジブル」でバーホーヴェンが打ち立てた定説から外れてるのもおもしろいと思った笑
本当に本当に他の女性に目もくれずモラハラ嫌がらせ一筋だからな、こいつは😂
「インビジブル」の方も学者だからなんか2人の透明人間の性質の対比がおもしろいんだよな笑

透明人間の性質はバーホーヴェン版とは違うんだけど、女性像は実はけっこう似てる。この映画のモスも被害者の立場に留まらず最後はモラハラ透明男と対峙し自ら落とし前を着けようとする。
この動きは何気にバーホーヴェンの映画の女性に近い。そんなことも思った。

ラストのモスの選んだ落とし前は驚愕すること必須!

とにかく地味だけど見所の多いホラー映画で観てよかった笑
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