賽の河原

透明人間の賽の河原のレビュー・感想・評価

透明人間(2019年製作の映画)
3.6

透明な人間の出てくる映画です。
個人的には『透明人間』って言われると、まずは
キッズのときに読んだ小説の方ですよね。あの帽子と外套に包帯っていうイメージが子どもながらにクッソ怖かったですよね。あとは当然ながらヴァーホーベンの『インビジブル』とかね、あれは原作とは全然違う方向性ですけど、ヴァーホーベンみがあって最高ですよね。
原作の割と王道的なSF的な、なんなら透明になっちゃった人の哀愁すら感じさせる作り、そしてヴァーホーベンの映画のフェティッシュな作りに対して、YouTubeとかでもバンバン広告打ってて「どんな『透明人間』なんだろう」と思って観に行ったんですけど、よくもまぁこれほどポピュラーっていうか、もう題材として使い古されてそうなに『透明人間』っていう作品を現代的にフレッシュなアレンジをしたよなぁっていう見事な作品でしたね。
もうオープニングタイトルから素晴らしいルックなんですけど、最初から豪邸から女性が怯えながら慎重に逃げようとするくだりが始まるわけですけども、もう見事に動きと表情と視覚的な情報で極めて映画的にこの映画の立ち位置がハッキリするっていう。
要は透明人間そのものじゃなくて、透明人間に迷惑をかけられる側の話になっている。マッドサイエンティストなモラハラ夫に追いかけられる女性の話っていうね。現代的な女性側から見たしんどさの話ですよね。『羊たちの沈黙』とかも連想しますけど。
で、透明人間さんサイドの嫌がらせがまぁー絶妙なヤダみで最高ですよね。最初はなんとも言えない嫌がらせなんですけどね、次第にギョエみの増す嫌さ加減がグエって感じですよね。中盤のレストランのシーンとかマジでビックリしましたし。
見せた方も良くてね。見せないっていう。もはやホラー、なんならJホラー的な怖がらせ方をしておきながら「脚立最高」っていうね。『ハイローザワ』以来の最高の脚立使いですよね。
エリザベス・モスの表現も素晴らしいですし、まあこれは原作民あるあるかもしれないですけど、透明人間のツッコミどころっていうかね。透明人間全裸問題みたいなのを解消するギミックも私は好きでしたね。
非常にウェルメイドなスリラー映画でね。ファーストデイだからって適当に観に行ったんですけど普通に大満足でしたね。
「いやぁー俺も透明になりたいなぁ〜」なんて思いましたけど、『勝手にふるえてろ』でヨシカが歌うように、現代社会において「透明」って結構深いテーマですよね。
賽の河原

賽の河原