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T2 トレインスポッティングのymdのレビュー・感想・評価

T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)
4.7
前作から20年ぶりという期間を置いて制作された本作。
きっちり物語自体も20年の時を経過しており、かつての刹那的な生き急ぎ感はすっかり消え失せ、代わりに悲壮感が大幅に増している。

率直な感想から言うと、とても好きな映画だった。あの完璧な幕切れを無駄にしない、理想的な続編だったと思う。
20年ぶりの続編というとビジネスの香りが漂いそうなところをそう感じさせずに、20年後の彼らを描く責任をしっかり果たしていると感じた。

前作では警察を巻くためにストリートを疾走するシーンから始まっていたのを、今作はランニングマシンで走っているというオープニングの対比も最高で、すっかり老けたレントン(ユアン・マクレガー)の濁った瞳の演技も素晴らしい。前作の主要キャラクターたちも本当に絶妙な具合に錆びていてその姿を観るだけでも価値がある。

20年たった今でも彼らの状況も中身も大して変わっていなくて、地べたを這いつくばるようにしてなんとか生きている。

前作はそれがまだ若さゆえの可能性を感じさせて奥行きがあったのに、今作の彼らはとっくに底が見えている。もう取り戻すことのできない瞬間を未だに夢見てもがく彼らの姿は滑稽で痛々しいけど、同時に、人間の簡単には変われない姿、というのがものすごくリアルで自分に重なってくるものがある。

最も変わったようなレントンは結局のところほとんど変わっていないし、過去もまるで清算できていない。
一方で最も変わっていないように見えたベグビー(ロバート・カーライル)が実は最も変化を受け入れていたのが印象的だった。
ベグビーのあの一連のシークエンスは泣けた。

主人公たちに必要以上に寄りそうなこともなく、醒めた視線で突き放したような話運びと演出も刺さったな。

ただ、前作ではフラジャイルだと思っていた彼らの友情(と憎悪)は思っていたよりもずっと根深いものだったというのがグッときた。

この描写をきっちりとしてくれたことで、前作から地続きである本作の物語性が補完され、深みを増していたように思う。

前作で素晴らしかったサウンドトラックが今作でも冴えていたのも見逃せない。
特に今作はぼくの大好きなヤング・ファーザーズが大きくフィーチャーされていたのが最高だったな。
安易に前作と同じ路線に進まずに今らしい、クールな選曲をしてくれたことに安心した。焼き直しほどダサいものはないからね、

さすがに前作のようなカッティングエッジなアナーキーさはないけれど、生々しくて痛々しい今作の方が好きかもしれない。
評判に違わぬ傑作続編でした!
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