ゆみな

T2 トレインスポッティングのゆみなのネタバレレビュー・内容・結末

T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

あれから20年後。
みんなオッサンになってた!でも確かに彼等のままだった。

物語はレントンが故郷エディンバラに帰ってくるところから始まるのね。お金を持ち逃げしてからの仲間との再会なので、もちろん気まずさ全開なわけだけれども。相変わらずヤク中のスパットとのシーンで一気に前作の世界観に引き戻されて、汚さにも懐かしさがこみ上げる始末。サイモンとの冷静な会話からの喧嘩シーンはニヤニヤが止まらなくて!やっぱり親友なんだなぁ…って思ったしね。レントンとサイモンの関係性は今作の方がより感情的に描かれていて、恋人のようでありお互いを心底嫌いなようにも見える…そのバランスが素晴らしい。結局はお互いを嫌悪しながらも羨望する気持ちが備わっていて、だからどちらかが優位に立つことが許せなかったりするのかなぁ。前作のラストで出し抜かれた形で終わっていたこの関係性は、やっぱり20年後も変わっていなくて…親友でありながら傷つけ合うようなことを平気でやってのけるあたりが絆の深さを感じると言うか。レイトンはサイモンが恋人って言い張るベロニカとサラッとセックスしちゃうとことか、ベグビーが脱獄していることを知っててレイトンに言わないサイモンの悪巧みとか。でもそういう行動をたぶんお互いが当たり前に理解している感じに胸がチクチクする。

ベロニカがサイモンの口癖をレントンに話した時、レントンが捲し立てるように彼女に言葉をぶつけまくるあのシーンが痛い。それは彼女に向けているようで自分にぶつけている言葉で、見られたくない傷を塞いだ瘡蓋を自ら剥がしまくるように追い込んでいく姿が痛々しくて好きだ。
彼等は大人になることにいまだに対処ができていない。大人になる術がわからないのかもしれないし。でも、人間なんてみんなそんなもんじゃないのかね?自分が子供の頃に想像していた大人になんて、今の自分も全くなれてはいないし。

そしてベグビーはやっぱりベグビーで。
彼のブレなすぎるところがこの物語の肝とも思えるんだけど、彼の中にもやっぱり心は存在していて。彼の父の話はなんだか苦い気持ちになったし、だからこそ息子にちゃんと向かいあえたシーンは素敵だと思ったなぁ。まあ、その後は通常運転なベグビーなんだけどさ。

今回4人の気持ちを過去と今に繋ぎ合わせているのがスパットの紡ぎ出す物語で、それのおかげで置いてきぼりになっていた自分に追いつき追い越していくんだよね。なんかさ、過去に囚われているわけではなく、過去も含めて今の自分にバージョンアップしたような感じかな。バージョンアップしたところで尊敬できるような大人にはなり切れない彼等を見ていたら、なぜか嬉しくて嬉しくて…この上ない多幸感に包まれてしまった。

聴けなかったレコードを聴くことができるようになるラスト…あの頃と同じように踊るレントンを観ながらやっぱり泣いた。

前日に前作をおさらいしたのが功を奏したのか、物語にどっぷり浸かって自分自身がヘロイン中毒になった気分に(どんな感覚かわかんないけど)!
子供の頃の4人がサッカーしてるとこ観ただけで泣きそうになったし。そして、前作のシーンをちょこちょこ挟み込んでくるもんだから、やっぱりダニー・ボイル監督ズルイわぁ…って思いました。そして監督とユアンの途切れた時期があるから、余計物語に深みが出ているような気もする。なんか、監督の思い入れも相当なもんだよね。スパットがボクシングジム(レイジング・スパット!)出てからの交差点シーンはBGMも含めて反則だよね!レントンとサイモンのシュールな裸シーンも見れたし、大満足の1本でした。
20年前に観た映画の続編を、同じように歳を重ねた今観賞できる喜び。それが前作超えるくらい好きってほんとに凄いことだよね。最高に面白かったです。
ゆみな

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