YP子

T2 トレインスポッティングのYP子のレビュー・感想・評価

T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)
5.0
ありがとうダニー・ボイル監督。
ありがとう20年前と変わらぬキャスト&スタッフ。
ありがとうイギーポップ!!!

観賞後、満たされた気持ちを叫びたい気持ちでいっぱいになった。

あぁぁぁぁ。もうっ!
最高!


私は続編をやると知ったその日から、観賞した4/29まで楽しみで楽しみで仕方なかった。待ち切れず、1の原作の小説を読み返し、2の原作の小説を読み、サントラを聴きまくり、T2を観に行く前の晩に1作目を観返し、準備万端で観に行った。まるで自分もエディンバラの住民のような気分で。


「この4人の20年後が観れるなんて...」


っていう底知れぬワクワク感は止まらず、映画館に行く時もずっと聴いてたサントラの中のイギーポップに合わせてルンルン歩いちゃうくらい観賞すべきテンションは整っていました。


「でも、こんな期待して面白くなかったら...?」


一瞬そんな思いもよぎったよ。
けど。
けど!
そんな事思ってごめんなさい!って思うくらい、最高に面白かった。

既に観た人の感想をチラっと聞いてたから期待はしてたけど、上回った。全っ然期待を上回って面白かった。なんとも言えぬ幸せと衝動に突き動かされて思い出すとニヤニヤしてしまう。

そりゃ、主要メンバー誰一人かける事なくキャスト陣も脚本読んで「やる!」って返事するよね。
だって最高の内容なんだもん!


もともとの96年公開の1作目は私の青春にはかかせない1本なんです。
リアルタイムでは観れてなくって、16歳の時に入り浸ってた個性的なセレクトショップのお兄さんに薦められて観賞したのをきっかけに大好きな映画になって私のぶっとんだ10代は「トレインスポッティング」と「時計じかけのオレンジ」がかかせない映画だったんです。

そこから18年。映画としては20年。

観賞した人も監督やキャストも、みんな同じように20年前後の時が過ぎて...みんな同じように老いて...
そこで見る「20年後」。同じキャスト。同じ自分。この感覚がまず、もう、たまらないんです。

1作目は16歳で観たから、自分だって同じく20年くらい歳をとっているわけで。
あの“選択”だらけだった若い青春時代と、“選択した結果”と対面する毎日の今とのこの気持ちはエディンバラの彼らと同じ。この続編を観れて(それも劇場で!)本当に良かった!

しかも、監督はこの想いをちゃんと分かってくれてたんだね!
っていうような、この映画のファンにはもうたまらないギミックや小ネタがバシバシ出てきてニヤけた顔は戻らないです。

ダイアンも大人になってたね!弁護士。
若い娘連れたレントンに「(あの娘)あなたにはちょっと若すぎる」で、ニヤっとしてしまった(笑)
あと、あれ。レントンとスパッドがジョギングで山に登ってるシーン。あれはなんですか?まるでジェダイの修行シーン(笑)もう最高。
車にひかれかけてニヤっとするとことか、いちいち前作とリンクさせてくる小ネタはどれもこれも最高。もう最高なんですよ。
マイクやゲイルも本人だったね!

しょっぱなから、前作ラストのウォータールーブリッジでニヤニヤしながら歩くレントン。(このシーンが映っただけでもうなんか胸いっぱい)
それと同時に、「がんばって走ったってなんも変わらなかった現実」を表してるかのような決して前に進むことはないランニングマシンで走る真面目レントン。
そしてその人生を現わしてるマシンでこけてぶっ倒れるレントン。
ここが物語の始まり。しかもこの物語を一瞬で表してるシーン。
お金の持ち逃げ成功して普通の人のように生活してきたけど、ここでレントンははっきりとつまづいたんだ。

そして、20代を駆け抜けて走りぬいた若者が40代になって昔の自分と対面できず目の前の辛い現実と葛藤する...
そんなせつない瞬間も多いお話なんです。
あぁ胸が痛い。



過去という亡霊にとりつかれたレントンたち。
ノスタルジーに憑りつかれ、過去を懐かしんで笑顔で話す。

わかる。わかりすぎる。自分だって、誰だって、結構青春ってやつを思い出しては語り合う時ぐらいあるよね。
今現在の生活に大満足だったら、そんなに思い出さないかもしれないけど、私は今でも自分の青春時代をよく思い出す。
だから、このノスタルジー病はすっごくよくわかる。

そして、今回のレントンのあのセリフ。
前回のナレーションの20年後ヴァージョン!!
もう涙ちょちょぎれましたよ。

“ 過ちから学ぶな
  過去の繰り返しをただ眺め
  手にしたもので妥協しろ
  願ったものは高望み
  不遇でも虚勢を張れ ”

これさぁ、全部、皮肉というか虚勢だよね。
意地を張ってるというか。そう思うと涙が出てきちゃう!
全部逆の意味で受け取ってみるの。
そうすると、レントンの本来の望みが見えてきて、でも叶える事ができないとこまできちゃってるから、全部裏返しで言ってるように聞こえるんだよね。あーせつない!


だって、これってみんなにもある事だから。
私だってビシバシ感じてる。
「あの頃は」ってしょっちゅう言っちゃう。
まさに1作目を観ていた10代の楽しかった頃の自分と、今の“こうあるべき人間”の集団大人社会で生きていく自分と比べてしまって「これがあの頃描いた未来か?」って思ってせつなくなったりね。

あとは、ドラッグや盗みから足を洗った。洗わず続けた。洗いたいけど無理だった。
そんな人生の選択をした彼らの、その後がものすごくリアルな感情で描かれている。
夢や希望なんてものはない、変に「かっこよく」とかそういう描き方でもない。
労働階級社会で人生を選ぶ事が出来ないと思ってたけど、「選んでやったぜ!」ってしてやったりしてみたものの変わらなかった人生...結構自分にも思い当たるかも...

レントンは前作の最後に「あんたと同じ人生さ」と言っている。
「普通の人生」を選択したんだよね。
寿命を勘定しながら、平穏に暮らすって決めたレントン。

いろんな思いを抱えて20年後地元に戻った時に、久々の自分の部屋でイギーの「Lust for life」のレコードに針を落とせなかったあの気持ち。
すっごいよく分かる。
そして最後のシーンではそのレコードに針を落とせてノリノリで踊り出す、あのシーン。もう、最高。最高すぎる。
そういうことだよね。って。そんな人生上手くはいかないんだよ。
だけど、これでいいんだよ。って思えて胸が熱くなって、もうテンションふり切れました!
最高以外の何モノでもない、素晴らしい続編でした!


「人生を選んでやる」って思ってた20年前の自分とは全く違う今の自分。現実にモヤモヤして生きてる大人になった自分が今このタイミングで続編を観れた事はとても良かった。


ドラッグ漬けになってまともな仕事もないクズ人間になるということ。それを教えるための映画なのか?どんだけ劣悪な状況になっても、真の友達が救ってくれる美し友情物語なのか?
ん?いや、違う。


これはものすごく身近に存在する「リアルな人間の生き方」なんだ。この友達を選び、この人生を選んだ、薬漬けの男たちの人生の話。選びたくない友達って何気に腐れ縁になっちゃったりするよね、って話。
そしてその裏には「選べなかった人生」が根本に大きくある。
レントン達、労働階級の現状ってやつ。“人生を選ぶ”なんて、できない時代だったんだよね。その中で仕方なく選んできた。そして、依存するしかなかった。って感じだよね。

この「依存」は誰の側にでもあって、それがドラッグかもしれないし、ギャンブルかもしれないし、やめられないネガティヴな習慣かもしれない。それと、思い描いてる美しい友情ではなく、もはや仕方なくいる腐れ縁の友達。そんな誰にでも起こってきた話なんだね。
よく10代の頃って地元を出るか、出ないか、みたいな話題も多いじゃない?あれにも近いよね。

私たちは毎日何かを選択して、何かを切り捨てて生きている。
そのほんの一瞬の出来事がどれほど大事か。
それを思い出させてくれる。この映画は。

この映画がただのドラッグムービーと捉える人もいるだろうけど、そんな事は一ミリもない。

選ばなかった人生を垣間見る。
誰かの人生を体験する。
あり得ない人生を目の当たりにする。
映画を観る醍醐味、そんな感じのものが全て詰まってる。
最高の映画だと思う。


何年たって歳をとったって、危機一髪でがむしゃらに突っ走っててもふと笑っちゃうようなあの瞬間を感じる事ができるんだ。
と教えてくれた。

人はいつだって「変わろう」ともがき苦しむ。それでいいんだ。と思わせてくれる映画。




何でか遠く離れた映画館でしかやってなくてわざわざ往復1500円も出してバスに乗り、1人で観に行った私。
4~5組みしかいなくって、え?そんなにトレインスポッティングってマイナーなの!?って思ったけど、そんなの関係ない。
1人映画館で観賞中もニヤニヤ&クスクス。笑い声を堪えられずちょっと声に出して笑ってしまったけど、心配いらない。ガランガランの劇場内はそんな風に観てる人ばっかで妙に居心地が良かったから(笑)

イギーポップが流れたエンディングはもう踊り出したかった!もう、この時のニヤけ顔はやばかったと思う(笑)
Lust for lifeをBGMにレントンの部屋がぐんぐん伸びていくシーンは、1作目と同じでもうさらにニヤニヤしちゃって、しかもその伸びた部屋がTrain(電車)になるんだもん!
もうっ!もうもうもう!ダニー・ボイル監督!あなたは神ですか!?
最高すぎて、顔面崩壊するくらいにやけちゃったじゃない。


公開時に渋谷で期間限定オープンした『T2 Bar』、行きたかったぁぁぁ。



とにかく、T2、間違いなく最高でした。
2作続けてこの最高な仕上がり。
ダニー・ボイル監督、あなたは本当に天才です!

T2=ターミネーターの時代はもう終わり。
これからは、T2=トレインスポッティング2の時代でいきましょう!

スコア「5」なんて足りない。
「5億点」くらい付けたい。あーほんと最高!




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最後にセリフの引用
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(”Choose your life”は)1980年代の薬物撲滅キャンペーンの標語さ
よくパロってた
たとえば ”選べ ブランド物の下着をな
むなしくも愛の復活を願って”
バッグを選べ
ハイヒールを選べ
カシミアを選んでニセの幸せを感じろ
過労死の女が作ったスマホを選び
劣悪な工場で作られた上着に突っ込め
フェイスブックや
ツイッターやインスタを選び
赤の他人に胆汁を吐き散らせ
プロフ更新を選び
“誰か見て” と朝メシの中身を世界中に教えろ
昔の恋人を検索し自分の方が若いと信じ込め
初オナニーから死まで全部投稿しろ
人の交流は今や単なるデータ
世界のニュースよりセレブの整形情報
異論を排斥
レイプを嘲笑
リベンジポルノ
絶えぬ女性蔑視
9.11はデマ 事実ならユダヤ人のせい
非正規雇用と長時間通勤
労働条件は悪化の一途
子供を産んで後悔しろ
あげくの果て
誰かの部屋で精製された
粗悪なヤクで苦痛を紛らわせろ
約束を果たさず人生を後悔しろ
過ちから学ぶな
過去の繰り返しをただ眺め
手にしたもので妥協しろ
願ったものは高望み
不遇でも虚勢を張れ
失意を選べ
愛する者を失え
彼らと共に自分の心も死ぬ
ある日気づくと
少しずつ死んだ心は空っぽの抜け殻になってる
未来を選べ ベロニカ
人生を選べ


“choose life” was a well-meaning slogan from a 1980s anti-drug campaign.
and we used to add things to it.
so I might say, for example, choose…
designer lingerie
in the vain hope of kicking some lie back into a dead relationship.
Choose handbags.
Choose high-heels shoes
Cashmere and silk to make yourself feel what passes for happy.
Choose an iPhone made in China by a woman who jumped out of a window.
And stick it in the pocket of your jacket fresh from a South Asian firetrap.
Choose Facebook, Twitter, Snapchat, Instagram
and a thousand other ways to spew your bile across people you’ve never met.
Choose updating your profile.
Tell the world what you had for breakfast and hope that someone, somewhere cares.
Choose looking up old flames,
desperate to believe that you don’t look as bad as they do.
Choose live-blogging from your first wank to your last breath.
Human interaction reduced to nothing more than data.
Choose ten things you never know about celebrities who’d had surgery.
Choose screaming about abortion.
Choose rape jokes, slat shaming, revenge porn,
and an endless tide of depressing misogyny.
Choose 9/11 never happened, and if it did, it was the Jews.
Choose a zero-hour contract and two-hour journey to work,
and choose the same for your kids, only worse.
and maybe tell yourself it’s better that they never happened.
and then sit back and smother the pain with an unknown dose of an unknown drug made in somebody’s fucking kitchen.
CHoose unfulfilled promise and wishing you’d done it all differently.
Choose never learning from your own mistakes.
Choose watching history repeat itself.
Choose the slow reconciliation toward what you can get rather than what you always hoped for.
Settle for less and keep a brave face on it.
Choose disappointment.
and choose losing the ones you loved.
And as they fall from view, a piece of you dies with them.
Until you can see that one day in the future,
piece by piece, they will all be gone.
And there’ll be nothing left of you to call alive or dead.
Choose your future, Veronika.
Choose life.
YP子

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