回想シーンでご飯3杯いける

T2 トレインスポッティングの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)
3.0
「ゴースト・イン・ザ・シェル」「ブレードランナー 2049」等、今年は'80年代~'90年代の作品のリメイクや続編が非常に多い。世界的な好景気で映画産業も好調だった時代。当時20歳前後だった層は世代別に見て人口が多いので、そのスケールメリットを狙った企画も多いのだろう。

この「T2 トレインスポッティング」も、正にその中の典型的な一作である。主人公レントンが46歳で、1作目を25歳の時に観た人なら、彼と同い年。その辺りの世代にとっては待望のリメイクなのかもしれない(因みに僕もその世代である)。

物語の舞台は前作の20年後で、前作のラストで逃亡したレントンがスコットランドに戻ってきて、主要登場人物の4人が再び結集する様子を描いている。ドラッグを服用する人物が減ったので、前作のようにトリッキーな映像表現は用いられていない。大人になった登場人物だが、現代社会の中で馴染もうにも、どうしても前作と同じようにはみ出してしまう。そのストーリーは前作に比べるとかなり現実的であり、深みと切なさを感じさせる。前作のファンも年齢を重ねている事や、そもそもの時代背景が変化している事を考えると、これらのディレクションは成功していると思う。

しかし、前作シーンの流用やエピソードの引用が多い前半パートの冗長な展開は、正直言って退屈だった。前作が好きで好きで堪らない人には至福の時間であるのだろうが、初見を配慮した状況説明が殆ど無いので、前作を観ていない人にとっては意味不明だったと思われる。レントンとベグビーがトイレで隣り合う中盤からの展開は、さすがダニー・ボイルと言った感じで、印象的なシーンの連続であっただけに、非常に勿体無い。

'80年代ポップスの懐メロも挿入される「T2 トレインスポッティング」は、結局、前作ファンの為に作られた同窓会のような作品なのだろう。そもそも前作に対してそれほど思い入れが無い僕は、当初から同窓会(劇場)に行く気は無く、レンタルDVDで鑑賞する事を初めから決めていた。それでちょうど良かったという感じがしている。

※実は僕、実生活でも同窓会に殆ど行った事が無い人間なんですよ。