和桜

T2 トレインスポッティングの和桜のレビュー・感想・評価

T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)
4.1
「なんて惨めな46才だ。帰るべき家も家庭もない。心を許せるやつもいない」

前作も勢いやセンスが爆発してて好きな作品だった。だけどリアルタイムで見てない上に時代も違うので、そこまで響くということはなかった。初めて見たときは、こういう時代もあったんだなというノスタルジーで刹那的な映画という印象。良い意味で昔の映画を見ている気分だった。

しかし本作の舞台は現代。
これはあの映画をリアルタイムで逃した人々にとっては、初めて彼らと時代を共有できた瞬間でもある。
つまり昔の映画の登場人物たちが、同じ時間を刻んで自分たちがいる現代にやってきたような、続編としてはこれ程嬉しい映画はない。
もちろん世代としてはかなり上に当たるんだけど、舞台が現代と言うだけでここまで違うものなのかと驚いた。世代としては前作の彼らに近いのに、今作の方が身近であり心を掴まれた。

これは彼らが本質的にはほとんど変わっていないからともいえる。
舞台は現代でも、彼らは相変わらず過去に生き、過去ばかりを見て語り合う。
ただこの様子が今を基準に描かれてるわけで、ボインの戦いも麻薬撲滅運動のキャンペーンなんてのも知らないけど、ひたすら最高に面白い。過去の過去を見るのでなく、現代から過去を見ることによって、前作よりもさらに共感出来てしまった。
そして彼らが変わってないからこそ、「人生を選べ」という現代の人々へ向けた強烈なメッセージが強くなる。
俺たちはあの時代を生きた。そして変われなかった。だけど世の中は変わった。お前は俺たちを超えろ。
いやお前が言うのかよって度肝を抜かれた。

何度でも言いたいけど、続編としてここまで奇妙に完成された作品はなかなかないんじゃないかな。続編までの時間がそのまま作品に反映されて、テーマがブレないどころかより明確に完結された。
何より20年経って関係者が社会的にも肉体的にも生きてるってだけで、今の映画界を見てると奇跡と言える。

この映画が過去の映画となるくらい時が経ち社会が変わった際、T3を撮ってくれないだろうかなんて考えてしまうけど、それは流石に野暮か。
T2として続編が出ると聞いた時はそこまで興味がなかったのに、見事にハマってしまった。冒頭にあるようにタイムマシンなんて出てこないんだけど、時間旅行をした気分。トレインスポッティングは新感覚SFかもしれない。
T3なんて映画が出来上がったら、多分自分はどんな作品の続編よりもワクワクしてしまうと思う。リアルタイムで前作を見ていた層と、はじめて同じ体験ができるわけだから。
和桜

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