茜

T2 トレインスポッティングの茜のレビュー・感想・評価

T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)
4.2
同じ監督、同じ俳優でファンには嬉しい続編。
前作のパロディ的なシーンも沢山あり、前作鑑賞前提という点からは決して間口が広いとは言えない作品だけど、だからこそ作り手からのトレインスポッティングという作品やファンに対する愛情を感じました。

あれから20年、彼らも歳を取り、私達も歳を取った。
レントンは離婚して職も家も失い、スパッドは相変わらず薬物中毒、サイモンも恐喝や薬物に手を染め続け、ベグビーに至っては殺人で服役中。
本当にしょうもなくて情けない、どうしようもない人達だけど、思い返せば20年経っても冴えない自分だってそんなもんだった。

前作で女の子に似たような台詞を言われたように、今作でもレントンは女の子に「あなた達は過去を生きている」と言われる。
20年経っても情けなくてどうしようもなくて変われないままの彼らは、確かに過去を生きているのかもしれない。
でも劇中でレントンが現代社会への不満を夢中で語る「choose life」のシーンで、共感して思わず泣きそうになってしまった自分も、結局現代を憂いて過去を懐かしむ変われない人なんだなと思った。

決して明るいラストではないし、寧ろダウナーで絶望すら感じるかもしれない本作。
彼らが「変われない」という事実を映したこの映画は、そんな人間を否定せず肯定もしない。
その中立的な姿勢は、懐古主義的で「変われない」自分に寄り添ってくれるようで、安心感すら覚える優しい映画だなと思った。
茜