なかなか良かった。ちょっと大人のストーリー。将棋という勝負の世界を通じ、人生における普遍的なことを描いた物語。動きがほとんどなく、一手の凄さが理解できない対局で、カタルシスもまずまず引き出している気もする。
幼い頃、両親と妹を交通事故で亡くした少年が、生きるために将棋の世界に進まざるを得なくなる。虐げられ、居場所を失う少年だったが、将棋だけはとにかく強い。原作を読んでいないので、これは少年のシンデレラストーリーかと思った。
しかし、もっと深い話だった。将棋の天才少年は勝負で挫折を経験する。そして人生の本質をつかみ、自分が特別ではないことを知る。
勝負の世界はたった1人の勝者とそれ以外の敗者、つまり1人を除けば全員が敗者。人は敗れるたびに壊れ、その破片を拾い集め、再び立ち上がっていく。つまり、人が生きていくとはそういうことなのだ、と。
義理の姉も、自分に負けた相手も、自分に勝った相手も…。壊れた自分の破片を集めて再生していくのは、自分一人でやらねばならないこと。故に自分は孤独ではないのだ、と。
将棋の勝負のシーンは、音をうまく使って、盛り上げるべきところでしっかり盛り上がった気がする。主人公の勝負の分かれ目のシーンでは、伏線を回収したわかりやすい演出も好感触。
ということで、後編も期待大。