えんさん

3月のライオン 前編のえんさんのレビュー・感想・評価

3月のライオン 前編(2017年製作の映画)
2.0
中学生で異例のプロ棋士デビューを果たした桐山零。若き天才と言われる一方で、彼は小さい頃に両親と妹を交通事故で失い、居場所もない孤独な身だった。その彼を救ったのは、プロ棋士でもある父の友人・幸田。将棋一家であった幸田の家で、ただ一心に将棋を打ち込んだ彼はメキメキと力をつけるものの、それがかえって幸田一家の中に不況和音をもたらしてしまう。成長した彼は幸田の家を出て、棋士としての生活を本格化させるとともに、一人暮らしを始める。そんな彼の目の前に現れたのは、川向うに住む川本三姉妹はじめ温かな人々だった。。将棋を題材にした羽海野チカの同名コミック実写化二部作前編。監督は「るろうに剣心」シリーズの大友啓史。

羽海野チカの同名コミックはかなり前から話題になっていて、NHKでのアニメシリーズもヒットし、満を持しての実写映画版の公開になりました。原作コミックをずっと読んでいたので、(アニメ版は観ていないですが)どれほどの作品にしてくれるのか期待いっぱいでしたが、予告編を見た段階で、主役の桐山零を演じる神木隆之介を始め、どの配役もコミックのイメージに近くて、これはもう安心しての鑑賞となりました、、、、が、映画本作を見ていると全然ノッてこない。。確かに原作に出ているエピソードも忠実に再現はしてくれているのですが、ただ、エピソードを再現しているだけに見えてしまうんですよね。原作は現段階(2017年3月時点)で確か12巻くらいまで行っているので、そのエピソードを全部映画化しようとすれば当然長尺にはなるのですが、そのために前後半に分けたとしても、そのそれぞれできちんと1本の作品としてまとめるものが必要なんですが、それが前編の最後まで見えてこなかったように思います。

前編で大きく時間が割かれて描かれるのは、桐山零の生い立ちと幸田一家と不和を起こした背景みたいなところ、それと対立するような現在時点の川本一家との団欒と、将棋映画なのでそれに絡むような対局を配置したまではいいのですが、それに止めればいいものの、そこにプラスして盛り込まれる桐山の幼き頃からのライバルである二階堂や、その師である島田と宗谷との対決までは明らかにオーバースペック。このオーバースペックしたところが、面倒なことに前編のラストになっているので、残念ながら島田と宗谷の人物像が完璧に薄くなってしまったなと思います。こう書いていくと、明らかに原作コミックの密度が濃厚なところが問題のは分かるのですが、だからこそもうちょっと解体&整理して、前編だけでも1つの作品としてフォーカスする部分を作らないといけなかったと思います。1つ1つのエピソードは丁寧に作ってあるのは分かるのですが、いろんな味が混ざりすぎて、全体としては味がしなくなってくる作品になっていると感じました。後編でどこまで巻き返してくれるかを期待したいと思います。