チーズマン

3月のライオン 後編のチーズマンのレビュー・感想・評価

3月のライオン 後編(2017年製作の映画)
3.9
いやあ観て良かった。

単に長いから前後編分けました、ではなく前編と後編でそれぞれ異なる魅力がある作品でした。

後編はやはり、“家族”と“繋がり”そして“将棋”と、零にとって避けて通れないものを軸に話が進んでいきます。
前編のある種群像劇的な登場人物の多さから、後編は一気にキャラクターが絞られていきます。
そして後藤、越えなきゃならない壁としての存在感が増し、ついにお互い守るものがなくなった攻め同士の殴り合いの対局は締めくくり方も含めてすごい良かったです。

主人公の零、観てる観客からしたら決してキミは1人じゃないと思うが、だけど本人自身がその繋がりを感じることができなければどうしようもない。
その繋がりを感じる為にはやはり、身寄りのない幼い自分が生きていく為に選択するしかなかった手段としての“将棋”を死ぬ程努力して強くなった今、自分は将棋を好きなのかどうか、それに向き合うしかないのですね。
なぜなら全部、将棋で出来た繋がりだから。
それを零が一歩一歩、地道に確かめていく映画だったともいえると思います。
そしてそういう意味では中盤の宗谷名人との対局は重要だったと思います。

零が一歩一歩進んでいくと同時に、零と関わる他のキャラ達の一歩一歩も集約されていくラストは、ああ前後編と観てきて良かったなと確かに思わせてくれる。


「人はこんなにも時が経った後で、嵐のように救われることがある。あなたの言葉に救われました。あなたは僕の恩人です。」
そんな感じのシーンが劇中ありますが、この作品全体を表していると言ってもいいかもしれませんね。
あの場面はすごく好きです。


川本家のくだりは主人公にとっては必要な要素であると同時に、やはり漫画的なものを感じてしまいますね、けどそこがマイナスになるとは思わないです、それは後編は主人公の映画だと思ったので、あの終わり方を含めベストだと思いました。

大友啓史監督作品の中では1番好きです。
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