krh

3月のライオン 後編のkrhのレビュー・感想・評価

3月のライオン 後編(2017年製作の映画)
-
後編の焦点は人間ドラマ。原作屈指のしんどいエピソードと映画独自の展開が続く。あかりさんや零の涙に引っ張られてこちらも泣きそうになった。最終的に問題に対してそれぞれ自分の決意で歩き出す登場人物たちの姿が良い。香子や歩の折り合いも、着地として良かったと思う。

対局が物足りないかと言えばそうではなくて、後編では盤面や展開にしっかり注目させられる。なんで苦しいのか、その表情をするのかが理解できる。(自分は将棋がわかる人間ではないんだけれども)
宗谷名人は漫画とは違う感じだけど、これもまた宗谷名人だなあと思わせる不思議な空気感で、対局した人が翻弄される説得力があった。

それでもやっぱり目につくところはあって、原作のエピソードを省くにしても、宗谷さんの耳のことは零が自分ではっきり気づくようにしなきゃいけなかったのではとか、「一生かけて恩を返すよ」の説得力が薄いんじゃないかとか(原作的なポエミー描写はここでこそやるべきでは)、零の若さ故の暴走と不安定さの描写とはいえ、暴言と貰い物捨てる畳み掛けはさすがにひいちゃうよ…とか。

エンディングの「春の歌」が映画の余韻にハマっててとても良かった。編曲がAPOGEEの永野亮なのはエンドロールで初めて知った、藤原さくらの声にも物語にもぴったりな素晴らしいアレンジ。春の歌自体も羽海野氏が原作の構想を練るのに聴いていたとのこと。

長さはあるけど、映画館で没入して、考えや思いを巡らせながら観るには良い映画なんじゃないかなと思う。家でDVDで観るのはしんどいかも。
krh

krh