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暗黒街のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

暗黒街(2015年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

イタリア政界の実話から着想したのだろう、生臭い政治腐敗と血生臭い裏社会の抗争を描く重量級のクライムドラマの秀作。
「この街は、人間の血と涙と性液で、腐敗している 」とは、内容を表す秀悦なコピーだ。
警察や検察は一切姿を見せない。
カジノ法案の蜜に群がるワルだけを描いた群像劇である。

事の発端は与党の大物議員でカジノ法案を押し通すフィリッポ・マルグラーディ議員の夜遊びから始まる。
コカインを吸引しながらの乱交プレイの最中、歳の若い娼婦がショック状態で死亡。
しかもその娘は未成年。
スキャンダルは身の破滅と、フィリッポは少女を連れてきた娼婦に後始末を任せて逃げる。

彼女は友人のスパディーノを呼ぶ。
彼はマフィア・マンフレディ一家の弟で、ホテルから泥酔を装って死体を運び、某所の湖に鎖を巻き付けて隠蔽する。
フィリッポの事務所にスパディーノが現われ、情事をネタに脅迫する。
狙いはカジノの利権だ。

フィリッポは同僚議員に対処を相談するが、依頼された地元マフィアの若きボス、ナンバー8は勢いでスパディーノを刺殺。
弟を殺されたマンフレディ一家とナンバー8の一派で戦争が始まる。
そして政治家や教会に繋がりを持ち、各マフィアから恐れられる伝説のギャング「サムライ」が法案の利権を狙っていた。
役者が揃い、血で血を洗う抗争が激化していく…。

序盤は風呂敷が広がるばかりで、なかなか全容が見えてこない。
淡々とした描写の合間に、残虐な暴力や美女のエロスなど、欲望をくすぐる要素が合間合間に刺激を与える印象。
前半は少々退屈でやきもきさせる点も多いものの、終盤からの怒涛の渦はとても見ごたえがあった。
たった一人の少女の死を機に「アポカリプス」へ向けて、悪人たちとその思惑が崩壊していく様が呆気に取られるほど壮絶。

悪人たちも個性が光る。
好色で野心家の政治家、マンフレディやナンバー8など悪人面のキャストは適役。
面白いのは「サムライ」の存在感。
見た目は普通のオッサンだが、放つオーラは大物という新しいマフィア像だ。

一方で、フィリッポが最後にすがる総理大臣や、「サムライ」が関わるバチカンの高位僧など、表の世界の特権階級を意味ありげに挿入することで重量感のあるマフィア映画となった。

娼婦やポン引きなど、弱肉強食の世界ですぐに捕食されてしまいそうなひ弱な者たちが、決して負け犬で終わらないところにも味わいがある。

力で虐げる者が、虐げられるものに復讐される。
たとえ暗黒街の顔役でも、掟や忖度に縛られない人間とっては、ただの人。
自分の行った悪の所業は、まわりまわって自分に戻ってくる。
因果応報という言葉が良く似合う物語だ。
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