ベルサイユ製麺

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

4.0
まだ自分がバブバブしてた頃、オモチャ箱の底の方に鋼鉄ジーグの超合金の顔だけが入っていた記憶があって、今思うとアレは「貴様は遠い将来、私の誕生の物語を目の当たりにするのだ!」という予兆だった(か、兄の手癖が悪かった)のではないかしら⁈

タイトルにばっちり『…鋼鉄ジーグ』と謳われてますけど、意外にも鋼鉄ジーグの実写版などでは有りませんでした。
そして更に意外な事に、凄く良い!燃える‼︎

街のド・チンピラ、のパシリなどして口を糊していた最底辺ガイがひょんなことから強靭な(だけの)肉体を手に入れるとこからお話は始まります。しかし悲しいかな、怪力は手に入れても最底辺ブレインなので、する事と言えば、窃盗→プリンとアダルトDVDを買って部屋に籠る、という等身大ぶり…。しかしある女性との触れ合いが徐々に彼を変えていきます。彼女は不幸な身の上から心を悪くしてしまい、まるで幼い少女のようで…。そして彼女は待ち続けていたのです、大好きなアニメーションの主人公・鋼鉄ジーグが救いに来てくれるのを!
…も、燃える!これはまさに自分の待ち望んでいたヒーローの誕生譚です!とっても言いにくいのですが、個人的にアメコミヒーローってそもそも馴染めないところがありまして…、“チカラが有るのだから良い行いをするのは当然なのである”っていう態度が、世界の警察=ザ・アメリカって感じがして(勿論大きな葛藤が有る事も存じておりますよ!)、なんか信用ならんなーって思ったりもするわけです。そこへ行くと今作の主人公はザ・凡人。ぶよぶよしたボデー、締まりのない表情、タバコ吸いながらプリン食べながらAV鑑賞。なんて信用できる男なのでしょう…。だからこそ、劣情と憐れみと、僅かばかりの正義心を引き金にして走り出した、この手作りヒーローには否応無く感情移入させられてしまうのです。そして正義の心に目覚めた彼はまるでイニャリトゥ作品の主人公の様に精悍な顔つきに!おぉ、我々は確かに“変身”を目の当たりにしたのだ‼︎前半のファウンドフッテージっぽいアクション描写から、後半のドラゴンボール宛らの肉弾戦への変遷も効果的ですねぇ。チカラを自分の物にしたって感じがします!
あと、好みの問題だと思いますが、ヒーローの部分を差し引いてもヨーロッパのチンピラ映画として凄く魅力的に感じました。仁義とか美学とかとは無縁の雑な暴力の嵐!ガタイの良い男がシャカシャカしたジャージ着てるのホント怖い…。

特殊効果の見栄えも悪くありませんし、構成も良く練られています。しっかりと人間の成長を描く、意外なくらい筋の通った作品です。イロモノだと思って敬遠してる方にも是非観てもらいたいですね。個人的には南米産自警ヒーロー映画『ミラージュ』にも近い切なさを感じましたよ。どちらも続編熱望!

もし自分に人より少しでも何か秀でた物がある様に思えたら、その時はヒーローになるチャンス!…今は特に思えない様なら、しょうがない、取り敢えず部屋でプリン食ーべよ。あれは甘いからにゃあ。

因みにポロリと指とか取れるので、ドクロメーターは2ドクロです!