Kakutani角谷

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグのKakutani角谷のレビュー・感想・評価

4.5
マーベルだのDCだのハリウッドの金満金ピカCGヒーローものが苦手な私の心の琴線に触れまくった、イタリア製ヒーローアクション映画。
評判になっていたのでもっと早くに観れば良かったと後悔。

荒廃したイタリアを背景に、登場人物たちも皆、社会の底辺で苦しみながら刹那的に生きるしかない毎日を送っている。『ジョーカー』よりも早く格差社会の問題を本格的に描いていた先見性。
経済不況にあえぎ、なかなか定職につけない欧州の国々の人たちの共感を集めたことだろう。
ヒーローものとして、ハリウッド製の方程式を外してくるような描写が多々あって、『ザ・ボーイズ』『ウォッチメン』などの作品のように既存のヒーロー映画のアンチテーゼとも成りうる作品だ。
主人公、エンツォと無垢なアレッシアの関係は『道』を連想し泣けた。
ルカ・マリネッリも国際的に評価されているだけあって、見事な怪演ぶり。
派手なCGのアクションとか一切ないが、エンツォの侘しい孤独、アレッシアとジンガロの狂気の変奏曲が映画を躍動させる。

「百年に1人のヒーローとは詩人だ」
常々ヒーローものには詩情があって欲しいと思っていたのだが、この作品全編をつらぬく寂しげでありながら豊穣なポエジーに完全にやられました。