みほみほ

愚行録のみほみほのレビュー・感想・評価

愚行録(2017年製作の映画)
3.6
👶2021年75本目👶

胸をえぐる怪作。観なければ良かったと思った。でも観なければ分からないこの世の不条理が、間接的に多くを考えさせる作品でもある。

好きか嫌いかで言えば、大嫌い。女は恐ろしいし、男はクズだし…。だから邦画は…と言いたくなる救いのない暗さだけど、大学生達のヒエラルキーやクズ男達の女の扱いなんかよりも、子供は親を選べないって事の深刻さに打ちのめされた作品。何なら、一番のテーマはそこな気さえした。

強い不快感を感じながらも、少しずつ見えてくる真相が面白くて、どんどん深みにはまってしまった。終盤の唐突さには思わず驚いたし、びっくりして笑ってしまった。不謹慎ながらスカッとしてしまうのが、この作品の黒いところでもある。(散々被害者の本性を見せつけられてますからね…)人間誰しもが抱くこの嫌な気持ちこそ、この映画の肝な気がした。

記者がどの人物から話を聞いても、全てが闇なんですよね。出てくる人全てがとことん闇。

大学内部の話だけ観てると、ヒエラルキーに囚われて階級社会のような構図が出来ていたけど、一番えげつないのが、いつもニコニコして穏やかなお嬢様的な夏原さんでしたね。あの手のタイプの腹の中を吐かない女こそ、本当は一番気が強いんだよね。ビンタもきっちり仕返してたしね。その辺りからも、やられて終わらない不屈の精神みたいな、勝ち組で居続ける意地みたいなものを感じた。(大胆に性格悪い女よりも、こういう女の方が嫌いだわ…)

多くの人間を踏み台にしながら、良いとこ取りして立ち回っていく姿、そしてそんな人間が最後に辿り着くのが、例のアイツってところもよく出来てる。実際こんな夫婦居そうだしね…(年取れば栄光なんて終わるのにダサいよね)

この世は格差社会ではなく、階級社会だと利己的な男(小出恵介演じる)が言ったように、この手の不条理は多く存在する。それを分かっていて生きているある意味賢い人間が、こうして希望を叶えていくのだろうか……

殺された一家を取り巻く人間達の内情を見るのは、結構なストレスを感じるものでした。この映画は、こんな世界が嫌で自由に質素に生きている人が観たらだいぶ心身の負担になると思うので、オススメはしません。

私もかなり胃の不快感に襲われたし、こんな人間ばかりではない世界だってあるから、地獄のようなヒエラルキーからは離れた世界で、ひっそりと幸せにそしてマイペースに暮らしたいと深く感じました。見る人によっては害にしかならない作品なので、元気ない時は絶対に見ないで欲しい。


親が誰であろうと、全ての子供が望む教育を受けられる社会にならないものだろうか…学費とか関係なく選択出来るようになれば良いのに…
そんな問題を深く深く考えさせられた作品。

「来る」で感じた不快感にも似ていたけど、こちらの方が人物相関図が陰湿でした。私には全く関係なかった世界だけど、自分の身に降りかかったらと思うと、胃が潰れそうです。THE 邦画な作品でした。
みほみほ

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