しろくま君

愚行録のしろくま君のレビュー・感想・評価

愚行録(2017年製作の映画)
5.0
原作を読んでるのにこの面白さはもはや卑怯。

愚行の映像化がとても綺麗だった。
見た目で判断したあげく自分の過ちを認めない人。もらった名刺をグラスの下敷きにする様子。酒の力を借りてはしゃぐモブ。オブジェの下に隠した灰皿。灰皿を持ってないくせに地面にタバコを押し付ける仕草。平気で優先席に座る根性。
セリフでも演技でもなくふと見える愚行が1番頭に残った。

ただ、濱田マリさんの役どころは個人的にいらなかったなあ。ラストも小説の方が良かった。でも原作にいるのにセリフがないお兄ちゃんの存在は全く邪魔じゃなかった。

満島ひかりさんがすごい。可愛くて痛ましくて切なくて愛だった。拘置所で目が虚ろで何を考えてるかわからないのも、新しい人生の幕開けに期待に胸を光らせてるのも、お兄ちゃんのことをいとしそうに話すのも、全てが完璧でああ、この人はこの役をやるために生まれてきたのねと思うほどでした。

妻夫木聡さんは語らずともわかりやすい演技がさすがでした。原作では全くセリフがないので一番難しい役どころなはずなのに、お兄ちゃんだなあとわかる表情や歩き方。満島さんの話を聞いてる時の顔が本当に良かった。

満島さんが「あの子を殴ったことは1度もなかった」と妻夫木聡さんに言った時の、そんなのわかってるよ当たり前だろと言いたげな頷きかたに泣いた。

二人の愛は今まで見たどんな愛よりも脆くてそれなのに縋りたい愛だった。

小出恵介さんのハンサムクズスマイルも
いい味出してました。