ポルりん

愚行録のポルりんのレビュー・感想・評価

愚行録(2017年製作の映画)
3.9
比較的レベルの高い作品なのに、出演者がリアルで愚行を働いたせいで上映中止になった作品。

あらすじ

エリート会社員の夫・田向浩樹(小出恵介)、美しい妻・夏原友季恵(松本若菜)と娘の一家が、何者かに惨殺された。
事件発生から1年、その真相を追う週刊誌記者の田中武志(妻夫木聡)は、一家の関係者を取材する。


タイトルの通り、各キャラクターがそれぞれ愚かな行為を行う様子を描いていた作品である。
本作は、現代社会が抱える見えない階級社会や虐待、虐めなどを包括する人間の愚かさがテーマであり、それを極上のイヤミスとして上手く表現されている。

構成力、カメラアングル、フレーミング、ライティング、編集なども素晴らしく、音楽に関しても本作にマッチした独自の静かでダークな雰囲気を上手く引き立ていた。
演技力も全体的に高く、静かでリアリティのある良い演技をしている。
妻夫木聡、中村倫也、臼田あさ美と演技力のある役者が揃っているが、それらの中でも満島ひかりは別格の演技力を見せていた。

目の使い方が非常に上手く、健常者と異常者の境目に近いからっぽな目をしているのだが、その奥にある怒りや憤りといった負の感情を見事に表現している。
物語の終盤に満島ひかりが独白するシーンがあるのだが、ここで鳥肌が立つ圧巻の演技を見せる。
本来ならば、視聴者に分かり易くするように映像で表現するのがセオリーだと思うが、満島ひかりの怪演により容易にイメージが湧くようになっている。
また、あえて映像に頼らず満島ひかりの怪演でイメージさせる事により、より悲しく、そしてより恐ろしく感じる。
もちろん、このシーンに至るまでの流れや演出、各役者の演技力が素晴らしいというのもあってこそなのだが・・・。

心の闇を抱えた異常者をナチュラルに演じているし、演技をしているとは思えない演技力も見せている。
個人的には真に演技が上手い役者は視聴者に演技と思わせずにキャラクターを演じる人の事だと思うので、正に満島ひかりのような人が真に演技が上手い人だと思う。

前から思っていたのだが、自分が綺麗に見えるように撮られているを第一にしている女優が多すぎる気がする。
日本人は演技力よりも顔を重視している人が多いので、次の仕事や今後のCMの為にもそっちを第一にする気持ちも確かに分かる。
だが、本来役者というのは自分が演じるキャラクターに入り込めているか、演じきれているかを重視するべきではないだろうか・・・。
誰とは書かないが、ちょっと浅まし過ぎるよ。

そういえば、知り合いが

知り合い「小出恵介が未成年女性と淫行したのは「愚行録」の質を高める為にワザとやったんだ!!彼こそが真の役者だ!!」

と称えていたっけ・・・。
確かに本作を鑑賞する前は小出恵介に対してクズのイメージはなく、「Nのために」で演じた西崎真人ような心に闇を抱えている方がしっくりしていた。
だが、あのスキャンダル以降はクズ役の方が適任ではないかと思うようになり、正に本作に登場する田向浩樹はクズ具合がいい感じにハマっており、田向浩樹を演じるというより田向浩樹=小出恵介にしか思えなかった。

だけど上映中止になったら何の意味もねーだろ!!
てかそんな訳ねーだろ!!

とりあえず、劇中で小出恵介が

小出恵介「やだよ~会ったその日にヤッちゃうような軽い女 ('ー') フフ」

というセリフを言うシーンがあるが、本作を観た人全員が色々な意味で嘘つけ!!!と思ったんじゃないか・・・。
それにしても、女性を利用して生きてきた男の妻が、それ以上に男を巧みに利用してきた女って・・・。
子供はこの夫婦の事どんな目で見てたんだろう??

この卑劣な夫婦がくっついた経緯など色々と視聴者の想像に任せる作品ではあるので、そういうのが苦手な人にはあまりお勧めは出来ないが、良い意味で後味の悪い作品が好きな人や現代社会が抱える見えにくい闇などが好きな人には、かなりお勧め出来る作品である。
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