ベルサイユ製麺

追憶のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

追憶(2017年製作の映画)
3.3
邦画で漢字2文字のタイトル付けるの、ハードル上がってはしまわないかな?「……ただ、 観て 、ください。」って感じになるよ?じゃあ観ちゃうよ?
降旗監督作はまともには一本も観てません。超ベテランな事くらいしか知りません。そして撮影が木村大作。恐ろしい程のクラス感…。

余りにも美しい風景に、おっかさん風のハミングがのった優美な曲がのるオープニング。近年余り見ないタイプの正面突破の正統派日本映画と見受けました。
ストーリーは、あらすじを参照して下さい…。サスペンス×ヒューマンドラマです。主人公の刑事役の岡田准一、始終顰めっ面で韓国映画みたいです。基本的に演技が凄く正統派で、“逆にリアル”みたいなアプローチはありません。役者も普通に上手い人を中心集められている感じです。個人的には安藤サクラが窮屈そうに感じられてしまい、ちょっと勿体無く思えてしまった。
オールドスクールな演出や、シーンの繋がりの編集も丁寧でとても分かりやすいです。ぼんやり見てても自然に話が飲み込めそうです。風景のショットがとにかく美し過ぎて、人間のドラマがちっぽけに思えるという負の効果を感じたりもしましたが…。
中盤、“良かった頃”の回想シーンが、千住明さんの大衆的な劇伴も相まってとってもドリーミーで、うっかり時をかけてしまいそうでした。思い出が自然とセピア色に輝き出すのは、ある種の老人力に依るものでしょうか?
結構重要そうだった実母との関係の件が回収されなかったように思えたのですが、メインの話はカッチリと隙無く回収されていました。特別苦い味わいとか、名状しがたい不気味な何か、とかは有りません。『愚行録』とか『灼熱の魂』とかを観てしまっていると些かライトな感も有ります。…なので個人的には物足りなかったです。
エンディングはオープニングを上回る重々しさです。美しいお月さまをバックに、エンドロールが縦書きで横スクロールです!

…自分が劇場にいると想像して、パッと客電が着いたら、客席にいるのは概ね熟年の観客達です。口々に感想などを言い合って帰路につかれています。この後、久し振りに行きつけだった洋食屋さんなどに行かれるかもしれません。或いは、独立して滅多に帰って来ない子供たちに電話をしてみたり…。
なんだか物足りないなー、と思った味覚障害の自分は、さっさと巣に帰って『ポーラX』でも『銀河ヒッチハイクガイド』でも好きなだけ観れば良いのだ!万事解決!どんな映画も素晴らしい。