Foufou

オールド・ジョイのFoufouのレビュー・感想・評価

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)
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これはもう、見る人によってさまざまな感想が口にされる映画でしょう。なにも難しい映画ではない。ふたりの旧友が、二日がかりで森の温泉を訪う、ただそれだけのお話。

出産を控える妻となんとも気まずい感じの優男のマーク(ダニエル・ロンドン)にフォーカスするか、それとも「大人」になりそびれた感のある禿頭のカート(ウィル・オールダム)にフォーカスするか。いや、もちろん両方に寄り添うことになるんですけど、質を異にする屈託というのでしょうか、いやいや、根っこは同じなのか、これは私の感覚では、四十前後の、ちょっと行き暮れる感じですよね、それがよく表れている。結婚についても、友情についてもね、一線、なんて目に見えるものがあるわけではないんですけど、飛び越える感じ、はたまたとどまる感じ、こうしたものを、(男女に限らず)誰しも切実に味わい、うろたえる瞬間を持つのではないか。それを、雨もよいの空の下、緑の横溢する森林のハイキングを通して描いていく。

同性の友情の揺らぎ、みたいなものは、『ライフ・ゴーズ・オン』でも切実に描かれていました。両作とも、あのように時間が流れてほしい、と見ていてしみじみと思われる時間感覚を実現せしめている。そこが本作と同じように男ふたりの旅行きを描いた『サイド・ウェイ』との決定的な違いかもしれない。『サイド・ウェイ』は騒がしく、華やかで、おかしくて、切なくて、救いもあった。本作は、とても静か。救いのありなしの次元を、ちょっと越えている。

ただ、私にとっては、過去の感情を扱った映画のように思いました。すでに子どももいますしね。映画に描かれた屈託の先にある、old joy を渇望しているのかもしれない。しかし旧歓は、もう得られないかもしれないという予感もある。

《…you’re alright. Sorrow is worn out joy.》
「あなたは大丈夫。悲しみは擦り切れた喜びだから」
Foufou

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