このレビューはネタバレを含みます
アマプラ駆け込みでようやく視聴。
うーん・・・私の周囲では観た全員が絶賛しているような印象だったのでかなり期待してしまったのだが・・・現実社会に疲れた大人向けのリラクゼーション・ムービーを描かせたらピカイチと思われる荻上監督だけに、実際にはそんなに甘くもやさしくもなく綺麗に解決もできないネグレクトやLGBTQ差別や児童の自殺未遂といったシビアな問題までも、そのお得意の手法であくまでふんわりやさしくキレイに描いて締めくくってしまっていることにどうにも違和感が拭えなかった。
いっそファンタジーに徹して、既成概念に囚われない新しい家族のもとでトモはすくすくと幸せに成長しました、めでたしめでたし、と思えるエンディングで終わってくれればよかったものを、あえて別れを挟む泣かせ演出&プレゼントの中身でくすりと泣き笑いを誘うほろにがエンディング、なーんてまやかしで終わってほしくなかった。
フィクションをフィクションと分かったうえで夢を見たい大人のためのファンタジーを描くのはいいが、明らかに辛い状況に置かれている子どもがそのコマにされていると心が痛む。あれではトモの母親はまたすぐ同じこと繰り返すだろうし、トモは再び実母に裏切られ傷を深くしてますます大人や社会を信用できなくなってしまう悲惨な未来しか見えない。
救いは出演者の演技がみな素晴らしかったこと。
特に、傷ついたら負けだとばかりに勝ち気で可愛げなく振る舞うけれど、本当は母親の愛情に飢えていてまだまだ甘えたい・・そんなぎこちなく繊細なトモのキャラクターを子役ながらに見事に演じていた柿原りんかと、見た目だけでなく所作や口調に至るまでごく自然に女性として振る舞い、細やかな愛情や母性までも嫌味なく表現してみせた生田斗真のトランスジェンダー演技は想像以上に素晴らしく、感銘を受けた。