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彼らが本気で編むときは、のyochinoirのレビュー・感想・評価

彼らが本気で編むときは、(2017年製作の映画)
3.9
トランスジェンダーのこと、母と子の関係、問題点に目が行きがちの映画だけど、この映画からは「丁寧に生きる」ということの大切さを感じる映画でした。

誰だって叶えられない思いを抱えている。そのことに飲み込まれてトモの母のようになってしまってはいけない。
暮らし方も人との接し方も丁寧にひとつひとつ愛情をかけて生きていくこと。
男とか女とか、母とかそうじゃないとか、リンコはそんなことにこだわってはいない。大切な人に手作りのごはんを食べさせること、大人がこどもを守ること、悔しさや怒りをきちんと昇華させる術を持つこと、そんな丁寧な生き方ときれいな心のリンコは愛情あふれる素敵な人でした。

リンコを演じた生田斗真くんは、どうみても斗真くんだったけど、上品な所作と表情で男性とも女性とも判断しようとは思えない「リンコ」という人でしかなかった。

私が専業主婦だった頃は子供達のマフラーと手袋を編んであげることがとても幸せで、リンコがいっているように編んでいる間に心が平らになっていくという感覚に共感できた。その感覚は編んだことのある人にしかわからないのかも。とてもいい時間だと思う。
映画の中でリンコが一生懸命に編んでいたモノには驚いたけど、トモとマキオもそれを108個作るのを手伝って最後3人で燃やす。そこまでの、3人で編んでいた長い時間は3人とも平らな心で一緒に過ごし、3人の絆を深めたんだろうな。

最後はとても切ない。
トモはきっとあのあとも母親に翻弄されると思うけど、リンコとアキオと過ごした時間と愛情を注いでもらったという経験が、トモを強くて愛情深い人間にしていくんだろうと、切ない中にも希望が持てる終わり方だった。
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