凛太朗

彼らが本気で編むときは、の凛太朗のレビュー・感想・評価

彼らが本気で編むときは、(2017年製作の映画)
4.2
LGBT、育児放棄、家族の在り方を暖かく優しい目線で取り扱った映画。

トランスジェンダーの介護士リンコ(元りんたろう)を演じるのは生田斗真。
リンコの恋人である書店の店員マキオを演じるのは桐谷健太。
マキオの姉ヒロミ(ミムラ)に置き去りにされる娘のトモ役に柿原りんかちゃん。

子供の頃、オカンがライオンの顔面がでかでかと入った手編みのセーターを編んでくれたことがあったり、孫(私の娘)にも色々編んでくれてたり、そんな話を病床に伏したオカンと、「あんたそんな昔のことよく覚えとるねぇ」とか言われながら病室でシミジミと昔を回想していたことを思い出しながらこの映画を観ていた。
私はトランスジェンダーではないのですが、多分『普通』とは違う生き方を選んだ人間だと思います。
そんな息子を、どんな目線でオカンは見ていたのだろうか。
亡くなる少し前に「あんたは本当は高校に行きたかったんやないかなぁって思うことがあるんよ。ゴメンね。」と言わたことがありますが、自分が自分の意思で決めたことだし、そんなことより私はあなたの息子でよかったよ。

トモの同級生で、やはりトランスジェンダーのカイくん(込江海翔)の母ナオミ(小池栄子)が、普通って何?っていう問いに対して、「普通は普通よ!異常ってこと!」と言う印象的なシーンがあります。
映画を観ていたら、この台詞にきっと腹立つと思うし、私自身クソ胸糞悪いなと思ったんですけど、残念ながらこの台詞ってのは今の日本社会ではまだまだ自然な反応だと思うんですよ。
セクシャルマイノリティやその他少数派と呼ばれる方々がどれだけ辛い思いをして心を傷つけられようが、ひとりのカイくんという息子を愛する母親としては当然の言葉なのかもしれないなと思いました。

リンコの母フミコ(田中美佐子)は、トランスジェンダーであるリンコを子供の頃から認めて凄く優しく育てあげました。
トモに対しても、リンコを傷つけたら許さない。あなたが子供でも容赦しない。って言うくらい、リンコを溺愛していますし、マキオという良き理解者もいます。勿論辛い思いもいっぱいするわけですけど、LGBTの方から見たら、これって一種のファンタジーなんじゃないかなとも思ったりしました。
身体は男で心は女という神様の悪戯は、不幸と呼ぶ他ないかもしれませんけど、フミコの言う通り、マキオに出会えて、マキオの父は既に亡くなり、母親は認知症でリンコの働く介護施でお世話になっている。
言葉は悪くてもホント恵まれてるなと思いました。勿論、両親健在で、理解して快く迎え入れてくれるならそれがベストなんでしょうけど、現実は中々に厳しいものです。平気で人の心を踏み躙るようなことを言い放つバカもいますからね。
でもそれも仕方のないことというか、こちらがこちらの主張を相手に突きつけて理解を得ようとするのなら、相手の主張も受け容れるなり受け容れる努力をするなりしなければなりません。マイノリティだとかマジョリティだとか関係なく。
そうじゃなければ、ただただ一方通行なだけのワガママでしかないと思います。

この映画はそういうところが決して押し付けがましくなく、とてもバランスのとれた作品だと思います。
子は親に似るといいますが、リンコは自分が母親から受けた愛情をトモに与えたんですね。毛糸のおっぱい。
わからないことが山ほどあっても、出来る精一杯のことをしてあげられたらいいんですな。
親が子に与える愛もそうだけれど、子が親に与える愛もそう。
男も女も大人も子供も母も父も、最初はどうすりゃいいかなんてわからない、寧ろどんどんわからなくなっていくばかりかもしれません。
毛糸の男根を煩悩の数編んで燃やすくらいわけわからんことだらけかもしれないけど、不器用でも伝えようとすること、受け容れようとする心はとても大切。