pika

ミルクのpikaのレビュー・感想・評価

ミルク(2008年製作の映画)
4.0
朝の匂い水の匂い風の匂い、画面から景色の香りが立ち込めてくるかのような空気感。見たこともない場所なのにまるでその場にいるかのように五感が反応し、一瞬の映像と音だけで身も心も映画の中へと誘わせてしまう演出の力に圧倒される。
子離れして母の役目から女へと変化していく母から自立しなければならない子供の大人への扉をくぐる、その境い目を繊細に描写していく。

説明もなく言葉もなく淡々とした日常から見えてくるそれぞれの相手に対する感情。
微細な演出が観客の記憶の中にある微かな叙情を掘り起こす。
細やかな感情の変化が他者の日常を変えていく瞬間、穏やかに崩壊していく世界のバランス。
親子の愛や恋心、仕事や未来への葛藤など人は常に変わり続けなければ他者と共存することはできないなどという、他者にとっては些細であっても誰もが経てきた劇的な人生の岐路を共有する。
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