菩薩

ザ・コミューンの菩薩のレビュー・感想・評価

ザ・コミューン(2016年製作の映画)
4.1
ルーカス・ムーディソンの『エヴァとステファンとすてきな家族』のヴィンターベア版と言った趣であったが、あちらが反資本主義やヒッピー文化に依拠した欺瞞に満ちた共同体であった一方で、より見え透いた個人主義の導入と健全な共同体運営は両立不可能な事を物語る現実的な路線。

極論としての持ち出される(持ち出されてはないか…)ベトナム戦争の副産物としてのポル・ポト、クメール・ルージュの「原始共産主義」への回帰は確かに「共同体」としての原点であり理想だったのかもしれないが、とは言えその実現の為に何が起きたかなんてのは書くのめんどいから各自ググって欲しい。理想社会の歪みとして精神疾患及びテロリズムの発生、犠牲になるのは社会的弱者であり、この場合「老い」と「幼き」に矛先が向く(あれが本物のハートブレイクショット)のは非常に分かりやすい(日本は「若き」と「貧しき」に向くんだけど…)。棄権を許された間接(この作品は直接か…)民主主義の敗北、無干渉は同時に無責任を生み、そこに流れる「空気」はいつだって人間を排除していく。

人間が欲望を有し、所有の概念を捨てない限りは弱肉強食の争いを続けなければいけない。要するに人間はとっくのとうに詰んでるからなぁなぁでやらなしゃーない、って事だと思う、犠牲が出て初めて皆がグッと固まる感じ、まぁクソだよなって思う。これが音楽の方に傾けばAmon Düüが生まれるんだろうけど、彼等だって分裂した。北欧らしい北欧映画だなと思ったが勿論気持ちの良い作品では無い、こう言うの大好物。
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