まっつぁんこ

エル ELLEのまっつぁんこのレビュー・感想・評価

エル ELLE(2016年製作の映画)
4.8
なんかすごいの観てしまった。
ひとことでは言い表せない複雑で奥が深い作品で楽しめた。
映画はゲーム会社の社長として働く主人公ミシェルが自宅で覆面の男に襲われる衝撃的な場面から始まる。
物音とそれを聞いている猫で最初は表現され、のちほどミシェルが襲われるシーンが再現される。
面白い演出で最初から映画に引き込まれた。
ミシェルは犯人を見つけるため行動を起こすが事件の真相に迫るに従い自分でも気付いていなかった欲望や衝動に目覚めていく。
ヨーロッパ映画らしからぬ異色のサスペンスで満足した。
上映後にポール・ヴァーホーヴェン監督とピンクのパステルカラーのスーツに身を包んだイザベル・ユペールさんが登壇。
イザベルは若々しくとても64歳には見えない。

ヴァーホーヴェン監督「五度目の日本ですが、今回は隣の方のおかげで特別なものになりました。」
イザベルはまず日本語で「コンニチハ」
その後「監督と一緒に来日できてうれしい。大勢のお客さんに来ていただいてありがとうございます。」と定型的な挨拶。
すぐにQ&Aに入る。男性からミシェルの正体、本当の性格を質問されて
イザベル「自分を滅ぼしてしまう面もあるかもしれないが彼女はこの出来事を通して自分自身を再構築している。ミシェルの過去や父親が殺人犯だということが彼女の本質とリンクしているのかもしれない。が、映画本編ではそのことには触れておらずひとつの情報として示されるだけ。好きに解釈して欲しい。レイプという暴力に直面して、彼女は男性的暴力がどこから来るのか知りたいと思っている。復讐に成功したの実存主義的体験となっている。」
MCの矢田部さんから、監督とユペールさんは役どころについてディスカッションを行ったのか質問。
ヴァーホーヴェン監督「一切ディスカッションはしていない。レイプの場面は危険で事故が起こり得るのでそのあたりにつては話をした。彼女の動機については一切話をしていない。するべきではないと考えていた。フロイト的分析は助けにならない。私はイザベルを信頼しているし彼女も直感的にわかっている。われわれは同じものを見ていたのでうなずくだけで大丈夫だった。」
次の質問も男性からでモデルになった事件はあるのか?
ヴァーホーヴェン監督「ミシェル10歳の時の事件が30年経った後どう影響したのか小説でもつながりは描かれていない。ミシェルを産み出して掘り下げて作り上げた。父親はノルウェーの70人が犠牲になった殺人事件が下敷きになっている。」
最後の質問は女性。暴力シーンで怪我はなかったか?大変だったシーンはどのシーンか?
イザベル「ミシェルは最初に復讐の計画をたてそれを成功させる。最後に犯人の妻がミシェルにお礼を言うミステリアスなシーンがある。彼女はカトリック信者でまじめな人なのに夫の行為に加担する。狂信的な行いで物語が複雑になっている。」
「大変なシーンはなかった。この映画を観るお客さんの方が大変かもしれません。」
「あえて言うと小さなすずめが死ぬシーン。何故かというとミシェルは小さな鳥の命でも救おうとするシーンで、いかに命が大切かというこの映画のテーマに通じてくる場面だからです。」

珍しく良いQ&Aで興趣が増した。
それにしても海外の女優は根性の入り方が違う。
この映画で、イザベルはバストトップもさらして熱演。レイプシーンにさらなる迫力を加えている。
不倫の映画なのになんにも出て来ない邦画女優とはレベルが違う(笑)