”その温もりにようはない!”
我々はどうしようもない有象無象の一部にあくまで自然的に生活している。男子や女子、エリートや落ちこぼれといった精神の国境線を内に引かれ、内なるMADを嘘という名の国境警備隊に金を払い守らせている。
もし、それがある日崩れたら?
もしくは、侵入者が現れたら?
この映画が「ワンダーウーマン」と同じタイミングで上映されていることは大きく意義があり、単にフェミニズム映画というジャンルに押し込められない、内なるMAD映画の系譜を走っているのだと思う。
白昼レイプされる主人公、何事もなかったような後片付け、穢れを流す風呂、寿司の注文…
明らかにおかしいと見えるが、主人公は腹の中に闇を抱え、エロゲ会社の社長をして歪みながら社会に溶け込んでいる。
あくまでその日常を悲劇混じりに切り取っただけで、日常のあらゆる局面で、間違った思想やアブノーマルな内側が蔓延していることを、ある視点で描いていることのスリラーなのだと思う。
単にフェミニズム映画として女性の強さを、「女は1人じゃ眠れない。」のような空虚なリップサービスはいらない。
今、そこにある日常。
「隣人を愛せ」
「頬を差し出せ」
「愛がウンタラカンタラ」
国境警備隊に任せるか?
自ら先制攻撃を仕掛けるか?
ワンダーウーマンとは別のベクトルで戦場を歩む。