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エル ELLEのspacegomiのレビュー・感想・評価

エル ELLE(2016年製作の映画)
4.0
勧善懲悪だとか、倫理や道徳に基づく原理は一切働かないし、劇中の人物にも内在しているようにも見えない。社会の求める「定型」からは逸脱した人間ばかりが織りなす矢印入り乱れた人間模様は、共感しやすい類の人間模様よりもずっと新鮮で、清々しく、素直に楽しめる。真っすぐにクィア映画ではあるのだけれど、アブノーマルな性癖だとか、抑圧と性といったわかりやすい文脈だけにこの映画を回収してしまうのはあまりにも勿体ない、もっと根深い部分で人間の多様さを捉えているように思う。終盤、吹き荒れる嵐の中で、家中の窓を閉めるという行為をともにすることで、二人と外の世界の断絶をみせる演出も面白い。ラストショットがあの2人の背中を捉えたショットであったことも、個人的な好みにドンピシャで嵌った。ビックリ箱的な音響と演出はやや過剰。
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