82saku

エル ELLEの82sakuのネタバレレビュー・内容・結末

エル ELLE(2016年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

隣人(女)の最後の言葉
「短い間だけど、夫の相手をしてくれてありがとう。」
隣人は主人公と夫の関係に気付いていた。
気付いていただけでなく、
もしかすると、
夫とその事実について共有していた?

何にせよ、
夫の不貞、
それに留まらず、
強姦という罪を知りながら夫を許していた。
「私には信仰があるから」という理由で。

信仰があるから乗り越えられたのか。
それとも、
夫と向き合う事をせず信仰に逃げたのか。

主人公は、
友人の夫と不倫をしていた事を、
友人その人に告げる。
理由は「もう嘘をつきたくない」から。

それが本当であれば、
車内で隣人(男)と交わした会話も本心だろう。
警察に告げるという意思も。
だが、
隣人は『これもプレイの一環』だと思い込む。
自分が隣人の立場でもそう思ったかも知れない。主人公は、この関係を受け入れている様な態度を取って居たから。
(主人公が事故にあった際、隣人(男)に手当てを受けたシーンは、何が起こっているのか脳の処理が追いつかず、自分は観ていて混乱した。)

プレイの一環だと思い込んだまま、
隣人(男)は、主人公の息子に頭をカチ割られて死んでしまう。
主人公に「何故」と言いながら。
『何故、、、
僕を受け入れてくれたのではなかったの??』


墓地のシーン。
父親の墓標には「人殺し」の落書き。
主人公は人殺しの父を憎んでいた。

会いに行くと告げると、父は自死した。
私も、人殺しだ。

隣人(男)を殺すつもりはなかったが、
手を下したのは息子だが、、、
私は、人殺しだ。

そんな思いが主人公の頭の中を巡っていたのではないか。

父は信仰に厚い人間だったが、
人を殺した。

私(主人公)は信仰を持たない人間だったが、私もまた人を殺した。

隣人(女)は信仰に厚い人間だったが、夫を救う事を放棄した。

信仰とは。


ラストシーンでは、
友人が一緒に住んで良い?と提案し、
主人公が快諾し、
仲睦まじく墓地を去って行く。

この二人に恋愛感情は感じ取れなかった。
この後、友人が復讐する予感もなかった。

この二人は、
友人としか言いようがない。
仕事仲間、では足りない。

旦那を寝取ろうが、
裸で抱き合おうが、
友人なのだろう。

二人の関係を表すピタリとした言葉が見当たらない。

でも、
そんなものは必要ないのだろう。
人が枠(言葉)を与える必要など、
ないのだろう。

セックスがあって、
暴力があって、
身近で人が死んで、
喧嘩があって、
仲直りがあって、
馬鹿な息子がいて、
嫌な嫁がいて、
新しい命が側にいて、





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