64歳(劇中では49歳の設定)の女優が、冒頭でいきなりレイプされる。
そこまでならまだいい。彼女は心身ともに傷ついているだろうにもかかわらず、黙々と部屋の後片付けをしたり、寿司の出前を取ったりする。この時、観客、口をポッカーン。
さらに、同僚とかがいる前で、世間話をする感じで、「私、レイプされちゃったのよねー」と普通に言っちゃうところで、またポッカーン。
そして、話が進むにつれ、卑劣なレイプ犯よりも、主人公の屈折した人間性が脳裏に色濃く刻まれ、いよいよ、開いた口は塞がらなくなる。
強い女が主人公で、周りの男が馬鹿ばっかりという、どこかで見た設定。そして、そんな危ない奴らの中でも、主人公が一番頭がおかしいという痛快さ。
アメリカで嫌われ、ハリウッドで映画を撮れなくなったヴァーホーヴェンが、これでもか、これでもかと、畳みかけてくる。
これで嫌悪感を抱くようなら、負けを認めたも同然。この作品には、一般人が持っているような、凡庸な感覚は通用しない。むしろ、そういったものにツバを吐きかけているのだから。
逆に我慢できても、その先には罠が潜んでいる。
見てはいけないものをずっと見せられているけど、いけないと思いつつもついつい見てしまう。そんな心地良い毒が身体の中を巡り始める。
かくいう私も毒されてしまった人間の一人です。