ハル

エル ELLEのハルのレビュー・感想・評価

エル ELLE(2016年製作の映画)
3.7
64歳(劇中では49歳の設定)の女優が、冒頭でいきなりレイプされる。

そこまでならまだいい。彼女は心身ともに傷ついているだろうにもかかわらず、黙々と部屋の後片付けをしたり、寿司の出前を取ったりする。この時、観客、口をポッカーン。

さらに、同僚とかがいる前で、世間話をする感じで、「私、レイプされちゃったのよねー」と普通に言っちゃうところで、またポッカーン。

そして、話が進むにつれ、卑劣なレイプ犯よりも、主人公の屈折した人間性が脳裏に色濃く刻まれ、いよいよ、開いた口は塞がらなくなる。

強い女が主人公で、周りの男が馬鹿ばっかりという、どこかで見た設定。そして、そんな危ない奴らの中でも、主人公が一番頭がおかしいという痛快さ。

アメリカで嫌われ、ハリウッドで映画を撮れなくなったヴァーホーヴェンが、これでもか、これでもかと、畳みかけてくる。

これで嫌悪感を抱くようなら、負けを認めたも同然。この作品には、一般人が持っているような、凡庸な感覚は通用しない。むしろ、そういったものにツバを吐きかけているのだから。

逆に我慢できても、その先には罠が潜んでいる。

見てはいけないものをずっと見せられているけど、いけないと思いつつもついつい見てしまう。そんな心地良い毒が身体の中を巡り始める。

かくいう私も毒されてしまった人間の一人です。
ハル

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