いよ

エル ELLEのいよのレビュー・感想・評価

エル ELLE(2016年製作の映画)
4.5
ネタバレします

2017年は変態映画の当たり年!!!

予告みたとき、レイプ事件自体が狂言だったのでは…? と深読みしていた。
なんにせよすっごく興味を惹かれるあらすじとポール・ヴァーホーヴェン監督作だったので楽しみにしていて、公開週にどの映画よりも優先して観た。
結果、私のしょぼい予想なんかは斜め上にかっとばしていく面白さだった。

イザベル・ユペールこわーーー!かっこいいーーー!綺麗ーーー!うちのお母さんより余裕で歳上とか。それでこの色気すごい。人間離れしている。

そして相手役のローラン・ラフィット。セクシーなんだけどちょっとだけ気持ち悪い男。デザートにちょっと塩入れる的な絶妙な配分ですね。内面はちょっとどころじゃなく拗らせているんだけど、セクシー。
他のキャラもアクが強かったなぁ。
なにやってもダメダメな息子が最後ちょっと自信つけてるの笑う。

物語としてはミシェルがレイプされ、犯人を暴き、共犯関係となり、犯人が死ぬっていうざっくりとした道筋にいろんなエピソードが散りばめられている感じ。

最初はちょっとした違和感から、じわじわと染み出して最後は蛇口をいっぱいに捻って溢れ出すミシェルの異常性。
周りの全てが思い通りじゃないと気に喰わない女王様。父親の事件が彼女の中で強いこだわりとなって残っている。表面上それを面白いと笑い飛ばしたりもする。
世間は父親が犯した罪の責任を彼女に押し付けるし、ミシェルはその波に抗い、フラストレーションを感じれば周囲の人間を使って解消する。

タブーはない。顔色ひとつ変えずに好奇心で親友の夫を寝とる。息子との近親相姦に近い関係性(肉体関係あるなしは別として)。元夫への干渉。童貞の部下を脱がせる。他人のプライベートに土足で立ち入ることになんのてらいもない。

そんなミシェルが暴力的にレイプされ、どう感じたか。もしかすると初めて満たされたのかもしれない。容赦なく殴られてるし血も出ていて見てる方は痛そうでしかないけど。

パトリックがほんとにいい。仕事もできそう。家事も手伝ってくれそう。隣人への対応も爽やか。側から見ていたらほぼ完璧な旦那さんかも。たったひとつの欠点がどうしようもないけど!!
しかも、おそらく合意の上でああいうことするのは彼的には「だめ」なんだよね。本当に嫌がってる感がないと。
ミシェルとの関係は言葉にしていないからギリセーフだったのか?変態の考えていることはわかんないな!もう!
雨戸閉めるシーンとか無駄にロマンチックでずるい!

車で送ってもらうシーンでミシェルが口走った「奥さんも…」ってセリフが気になる。つまり、パトリックが奥さんをレイプして、彼女は信心深く純潔を喪ったから結婚を決めた…とかあり得るのかなと。想像してしまって辛くなった。
あるいは結婚して彼の性癖を知ってから信心深くなったのかもしれない。
トラックの前でミシェルにお礼言うシーンが印象的だった。

ラスト近くのシーン、みてて最初のうちは偶然に息子が帰ってきたのかなぁとも思ったけど考えれば考えるほど計算の上だ。
完全に計画していたわけではないだろうけど、息子に早すぎる帰宅を告げ、パトリックの進入から暖炉の近くへ誘導し、母のレイプ現場を目撃した息子が角材を取るであろうことを見越して…。
殺意があるとかではなく、ちょっと怪我でもさせて警察呼んでみんなに知らしめてやろうかな、だったかもしれないけど。死んだところで新しいおもちゃが壊れちゃったくらいの感情だと思うんだよね、ミシェルって。そこがまたこわおもしろかっこいい。イザベルユペールの、無表情の中に感情が動いている演技がすばらしい。

お母さんが死にかけてるのに演技と疑っているところとか、お父さんの死体と対面のシーンとか、悪趣味なユーモアも好き。
おばさん達がFPSゲーム製作会社を立ち上げて大成功するって設定、ツッコミどころはあるけど面白かった。

大人のための変態コメディサスペンス映画だった!
「Pourquoi...?」って死んでいったかわいそうな強姦魔パトリックに合掌。

原作なら心理描写も書き込まれているのかな?また読みたい海外小説が増えてしまった。

【パンフ】
★★★★☆
・マットな赤の表紙でカッコイイ
・写真多め
・インタビューはユペールと監督のみ
いよ

いよ