凛太朗

エル ELLEの凛太朗のレビュー・感想・評価

エル ELLE(2016年製作の映画)
4.5
ポール・ヴァーホーヴェンはやっぱこうでなきゃ!つったら、この映画が描く『らしさ』や『こうあるべき』といった概念に対するアンチテーゼに反する気がするんですけど、まぁ流石ヴァーホーヴェンと言うべきか。

エロスやバイオレンス描写、常識を疑えかの如くモラルや概念に対する問いかけに定評のある監督ですけど、それが爆発してます。

御歳64歳のフランスを代表する女優イザベル・ユペール演じるミシェルが、冒頭からいきなりレイプされていて、レイプ魔が去った後、何事もなかったかのように割れた食器を片付け、湯船に浸かり、出前で寿司とって息子を招き食す。
ゲーム会社の社長として翌朝普通に出勤して、何やらモンスターが触手伸ばして女性を襲うゲーム開発。
仲間内で集まったレストランでは「昨日、レイプされたの。」と平気で発言。

冒頭から人によっては嫌悪感を抱くし、え?あんな酷い目にあって、なんでこんな反応なの?ってなりますよね。この人大丈夫?頭イカれてんの?そういう性癖なの?って。
息子に子供が出来ても、DNA検査しないととか言う冷徹な人なんか?とも思いますが、誰がどう見てもお前の子じゃないだろっていう。
性生活にしても奔放で、歳がどうだとか相手が誰だとか性別がどっちかだとかあまり関係ない。

しかし、ミシェルは別におかしくなってしまってるってわけではなく、レイプに対してそれなりに警戒していたりもします。防犯グッズ買ったり、戸締りしたり、変な動画が出回れば会社の部下に犯人探しさせたり銃の撃ち方を教えてもらったり。
人並みに嫉妬したり心配したりもするわけであり、こういう人って決めつけられるような人格ではありませんね。

レイプ発覚間際や発覚後のミシェルの行動も色々議論の的にそりゃなるだろ。って話ですけど、つまり女だから女らしくしないといけないとか、レイプ被害者だから被害者らしくしないといけないとかっていうものをぶった切ってきてるんですよね。
それどころか、フランスで作ってる映画だかどーのとか、ジャンルがどーのとか、そういう枠もぶっ壊しにかかってる、凄い映画だなと思いました。

イザベル・ユペールはとても64歳とは思えない美しさだし、その演技も凄い!
凛太朗

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