キャッチ30

エル ELLEのキャッチ30のレビュー・感想・評価

エル ELLE(2016年製作の映画)
3.4
当初はアメリカ映画として製作される筈だった。しかし、主人公のミシェル役を多くのアメリカ人女優が拒否した。理由はミシェルに共感出来ないからだという。結局、ミシェルはフランス人女優であるイザベル・ユペールが演じることになると同時に製作もフランスになった。

ミシェルは確かに共感できないキャラだ。父親が過去に起こした陰惨な事件により、自らも晒し者になる。そのせいか、母親と息子や元夫などの他者に対してどこか冷たい態度をとる。おまけに周囲の人間はアブノーマルな人物たちばかりだ。同僚の女性の夫や息子の妻、極めつけは隣人の夫だ。

ユペールは高慢だが快楽を追い求める女性像を体現する。気丈な強さやマゾヒストな気配も漂わせている。

監督を務めたのは際どい暴力描写で知られるポール・ヴァーホーヴェン。ヴァーホーヴェンは赤の照明や黒のドレスを用いて、倒錯した世界を描写する。矢継ぎ早な会話が頭に入ってこないのが残念だが、変態監督と名女優が紡ぎ出すスリラーはアメリカ映画には出せない味がある。