Xavier

あなた、その川を渡らないでのXavierのレビュー・感想・評価

4.5
76年もの間、二人で共に歩いてきた人生
しかし、やがては訪れる別れの時…

今では自分で韓国映画を選び、観れる様になったが、昔はそうではなかった。
最初は、ドラマでファンになったチャ・テヒョンやチャン・ヒョクの出演作を片っ端から見始めたのだが、後が続かない
どんな基準で観たいのかも分からない
困った挙げ句、売れた順に観た方がいいかなと思い、歴代観客動員数ランキングで1位から見始める事にした。
最近、レビューをどんだけ書いてないんだろうと思い、改めてランキングを調べてみた。そうすると、結構書いてない事に気付き、片っ端から再観賞することに

この作品もそのランキングの中の作品。ただこの作品が他の作品と違うのは、この作品がドキュメンタリー作品だと言うこと。
公開から徐々に口コミで広がり、社会現象にまでなった、ある夫婦の日常を納めた作品だ。

98歳の夫ビョンマンと89歳の妻ゲヨル(最初は95歳って言っているので、多分3年に渡り撮影されたと思う)
子供もすでに独立し、結婚76年目を迎えるが、事あるごとに妻に花をあげたり、時には水、時には雪を掛け合ったりと仲睦まじい。
また夜中にトイレに行くことが怖い妻のために、一緒に付き合い怖くないように歌を唄ってあげる姿は、ホントに微笑ましい。互いが相手の事を思い遣っていることが伝わってくる。
どんなに愛していても、その気持ちを持ち続ける事は難しい。喧嘩や暴力によって離れてしまうこともあるだろう
そんな事を考える、76年もの間続いた事は、ある意味羨ましい。
一生を添い遂げる人と巡り会えたのだから…
作品の前半は、そんな夫婦の日常が映し出されるが、年を取り普通に出来ていた事が出来なくなり、イライラするビョンマンの姿も…

市場に2人で買い物に行くシーンがある
そこでゲヨルは小さい子どもの洋服を6人分買うのだが、何故買うんだろうって不思議だった。
その前のシーンはで子どもたちが家に帰って来たシーンが映し出されるのだが、
孫たちはその買っている服の対象年齢からすると、はるかに年上だったから。

その理由は、その後のゲヨルの言葉で明らかになる。
ゲヨルとビョンマンの間には12人の子どもが出来たが、そのうち6人を3~6歳の間で亡くしていたのだ。
夫婦は、その後当時貧しく、そんな服を買う余裕もなく、その為亡くなった子どもたちに、そんな服を着せられなかった事がゲヨルにとってはずっと心に引っ掛かっていた事だったのだ。そして、その服を燃やしどちらかが先に逝った方が、天国で子どもたちに渡すとビョンマンと約束していたのだ。

そんな気持ちを抱えたまま、ゲヨルが日々過ごしてきたかと思うと、涙が止まらなかった…

そして作品の後半になると、溺愛していた愛犬コマを亡くし、悲しみにくれる夫婦に夫ビョンマンの病気の進行が重なり
2人の間にも笑顔が無くなってくる
そして遂には…
後半は、涙、涙だった。

ラストシーンにゲヨルが夫の墓に向かい
"絶対に忘れない"
"心の中でずっと思ってる"
"世界で一番あなたのことがすきだよ"って呟く。

大号泣だった…

ゲヨルはそんなに思える人に出逢えて、幸せだったかなぁ…

韓国のおばあちゃんやおじいちゃん物って、泣かされる。

"おばあちゃんの家"、"チャンス商会"、
最近では"君が描く光"…
またその中に入る一本が見つかりました
Xavier

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