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あなた、その川を渡らないでのkのレビュー・感想・評価

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あえて、点数はつけません。

韓国の村に住む、ある老夫婦のお話です。この老夫婦、非常に仲睦まじくて、微笑ましい限りなんですね。こんな付き合いたてのカップルみたいな老夫婦ほんとにいるの? と却ってリアリティを疑ってしまうほど。例えば、秋になると落ち葉が庭に落ちてます。それを二人で掃除していると、おじいさんがおばあさんへ落ち葉をかけていたずらするんですよ。すると、おばあさんも「やめてよ」と言いながらもやり返すんですね。で、そのやり取りの後に、おじいさんがいたずらをしたお詫びにおばあさんへ近くに咲いていた花を摘んできてプレゼントする、っていう本当に理想的な夫婦関係を築いているんですよ。あと、夜トイレに行く時は必ず二人で手を繋いでトイレまで行って、おばあさんが用を足している間、おじいさんは外でずっと待って、おばあさんが怖がらないように歌を歌ってあげるんですね。すると用を足したおばあさんはおじいさんに「寒かったでしょ?」なんて言って気遣ってあげる、っていうエピソードも撮られているんですよ。中盤で、その老夫婦二人で子供服を6着も買いに行くんですが、それもまた感動的というか、現実的というか、深いエピソードなんですね。結婚から76年目を迎えても仲が良いのは、単にただ楽しく一緒に過ごしてきたからじゃなくて、辛い日々を一緒に乗り越えてきたからなんです。その過去の部分の独白が非常に重苦しくて、現実を直視させられます。

タイトルの通り、物語が続くにつれて二人にも別れのときが近づきます。二人が一緒にいた76年という歳月を想像した時に、私は本当にラストでいたたまれなくなって、結果的に号泣しました。愛の教科書のような作品です。人間として、見ておいてほしい一本です。
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