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オクジャ okjaのkuuのレビュー・感想・評価

オクジャ okja(2017年製作の映画)
3.9
『オクジャ/okja』
原題 Okja.
製作年 2017年。上映時間 121分。
ポン・ジュノ監督が、ブラッド・ピットの映画製作会社プランBとタッグを組んで手がけたNetflixオリジナル韓国・アメリカ合作映画。
。。。
余談ながらPlan Bは、2001年11月にブラッド・グレイ、ブラッド・ピット、ジェニファー・アニストンが設立した映画製作会社です。
2005年、ピットとアニストンが離婚した後、グレイがパラマウント・ピクチャーズのCEOに就任し、ブラッド・ピットが単独オーナーとなってます。
『ハウスメイド』『その怪物』で知られる子役アン・ソヒョンがミジャ役を演じ、ポン・ジュノ監督と組んだティルダ・スウィントン、ジェイク・ギレンホール、ポール・ダノら豪華キャストが共演。
『ウォーキング・デッド』親愛なるグレンことスティーブン・ユアンもでてました。
オクジャの顔のデザインは、マナティーをモデルにしてるそうでブサカワいい。
柿をボリボリくうのもたまらない。

韓国の山間の家で暮らす少女ミジャは、大きな動物オクジャの面倒を見ながら平穏な毎日を送っている。優しい心を持つオクジャは、ミジャにとって親友ともいえる大切な存在だった。
ところがある日、多国籍企業ミランド社がオクジャをニューヨークに連れ去ってしまう。
自己顕示欲の強いミランド社CEOルーシー・ミランドが、ある壮大な計画のためにオクジャを利用しようとしているのだ。
オクジャを救うため、具体的な方策もないままニューヨークへと旅立つミジャだったが。。。

今作品はポン・ジュノ監督の『スノーピアサー』と同様に、独創的で予測不能、暗く陽気で、ポン・ジュノ監督の古典的なキテレツなキャラが登場する作品でした。
ティルダ・スウィントンは『スノーピアサー』に続いての出演だが、今回はジェイク・ギレンホールと競演しており、彼はこれほどワイルドな演技を見せたことはない。
しかし、『スノーピアサー』が階級間の不平等を風刺しているのに対し、『オクジャ』は食品業界を風刺している。
この題材は風刺するのに長い時間がかかったと思うけど、ボン監督作品ながらあまり期待していなかったが、オクジャの姿を見て直ぐに完全に釘付けにしてくれた。
今作品は、韓国の山間部の小さな農場でおじいちゃんと一緒に育った少女ミジャと、彼女の親友で、マーケティング・キャンペーンの一環としてアメリカの大企業から贈られて育てた遺伝子組み換えの『スーパーピッグ』の話でした。
ミジャの知らないところで、このスーパーピッグはプロモーションのためにアメリカに戻され、最終的には屠殺されることになっていた。
おじいちゃんが隠れて豚を手放したことを知ったミジャは、友を取り戻すために一人旅に出る。
その旅は、ティルダ・スウィントン、ジェイク・ギレンホールらアメリカ企業『ミランド・コーポレーション』とポール・ダノ、スティーブン・ユアンら過激な動物保護団体『動物解放戦線』の狂気に満ちた人物たちの間で、彼女を岐路に立たせることになる。
ポン・ジュノは絶好調やなぁ、『オクジャ』はこれまでほとんど見過ごされてきた感に申し訳ない。
『反肉食』、あるいは『菜食主義のプロパガンダ』ちゅう批判(小生は人に強要しなきゃ主義主張は自由やとは思てるが)を読みどこか今作品を避けてた。
しかし、今作品はこのような見方は不合理であり、その理由は簡単に説明できる。
まず、この映画を書いたポン・ジュノは肉を食らい、ビーガニズムがほとんど存在しない文化の出身である。
(ブラッド・ピットはビーガンやけど)
多くの方が共感するはずの登場人物、韓国の田舎の農村部の人たちは、農場で採れた鶏肉や魚を持続的に食べているところを目撃する。
さらに、唯一ヴィーガンと思われる動物活動家の登場人物は、完全にばかばかしく、まともに取り合うことができないように描かれている(ポール・ダノの最高のシーンは、非暴力というグループの約束を裏切ったとして、無力になったスティーブン・ユアンを『グッドフェローズ』風に蹴り飛ばすというもの)。
最後に、ビーガンという言葉は一度も出てこないし、その概念も脚本には出てこない。
しかし、今作品がやっていることは、優れたダークコメディがすべてやっていること(今作品は何よりも優れたダークコメディだと云えるかな)、つまり、厳しい現実の中にファンタジーを根付かせることである。
これは、おかしな声で話す家畜が冒険に出かけ、その家畜と我々の夕食との間に何の関連も見いだせないようにするためにあらゆる努力が払われるようなアニメやない。
今作品の中で、旅が最終的に終結(あえてこう書いときます)へ向かうとき、今作品のリサーチのため実際『終結』が行われてる場所を訪れたボン監督は、その場所を大まかに描いている。
こうしたシーンに動揺する人もいる。
その場所が何であるかについて何の幻想も抱いていないので、そこで展開される譫妄のドラマにただただ引き込まれるだけでした。
しかし、この題材がハリウッドやメディア全般でタブー視されていることについて、何かを語っているのかもしれない。
ドキュメンタリー以外の映画で、食の持続可能性が話題になることはあまりない。
畜産業は世界最大の汚染源であり、工場で飼育されている動物たちは『オクジャ』に描かれているものよりはるかにひどい扱いを受けていることが多い。
(そして、気候変動に歯止めをかけるためには、世界の食肉消費量の大幅な削減が必要です(ちなみに、植物性の食材を適切に計画した食事は、最も健康的な食事方法でもある)。
これらは誰もが知っているはずの基本的な事実であり、何ら議論の余地がないはずなのに、あまりにも話題から漏れているため、このテーマに近づくことさえ、どこか争点があるようです。
そして、この重要な主題にアプローチしている唯一のフィクション映画であることが、今作品の長所だと思ういます。
興味深いことに、『オクジャ』と同じ年に、近しいプロットの映画が公開されてた。
ギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』。
『シェイプ・オブ・ウォーター』も、ファンタジーの生き物と関係を持った女子が、生き物を『所有』して害を加えようとする悪の企業(と大げさな悪役)から生き物を救い出すという話でした。
『シェイプ・オブ・ウォーター』が大好きで、『オクジャ』と同じ理由で非常に魅力的だと感じましたが、一般的には『オクジャ』の方が少しワイルドで楽しいと感じがしたかな。
しかし、『シェイプ・オブ・ウォーター』が『オクジャ』とテーマ的に異なるのは、クリーチャーが何を象徴しているかという点で、スーパーピッグのオクジャは食品産業を風刺しているが、『シェイプ・オブ・ウォーター』のクリーチャーは、どちらかといえば人種差別のたとえであり、とにかくより安全な題材と云える。
今作品に続いて、ポン・ジュノは『スノーピアサー』のより安全な(しかし同様に重要な)階級格差のテーマに戻り、『パラサイト』ちゅう、よりトーンダウンし、スケールダウンした(しかし依然として完璧に実行された)映画を撮った。
それが韓国映画に与えたスポットライトは、なんら関係のない小生も嬉しくなった。
しかし、誰も触れる勇気のないテーマについて、真に独創的で驚異的な映画を作った彼が、本当にそれに値する以前にこの注目を受けていたらと願わずにはいられないかな。
今作品は、今更ながらお気に入り映画になりました。
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