ヤッスン

オクジャ okjaのヤッスンのネタバレレビュー・内容・結末

オクジャ okja(2017年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

より映画的になった『ブタがいた教室』の印象。
もともと食用としての存在のスーパーピッグ。それを取り戻さんとする姿には、正直最初は響かなかった。もう自分が大人になってしまったからか、単にお肉を食べるのが好きだからか。ビジネスとしてオクジャたちを食べることは、確かに残酷とはいえ「当たり前のこと」だと思った。
ただミジャはその現実を理解した(もしくはしていた)ことに面白さを感じた。確かに彼女は農家育ちだし、その点の不条理さはわきまえていてもおかしくない。会社の主張も最初から分かっていたかもしれない。ただ両親のいない中10年も一緒に山をかけずりまわったオクジャは、もはや家族になったのだ。「食べられるのがかわいそう」ではなく、「もっと一緒に暮らしたい」から奮闘するのではないだろうか。

本作では韓国語と英語が入り混じる。オクジャが最初NYにつれていかれる話をする場面や、トラック内での通訳シーンは印象的。人間同士の言語による会話に壁が存在している。しかしオクジャとミジャにその壁はない。1人と1頭が会話する際、その内容に字幕や吹き替えはない。10年一緒にいた家族だからこその関係なのだろう。ミジャが奮闘する説得力もここで感じられる。

少し逸れたが「ミジャが理解した(していた)」という点に関して。ビジネスや食料に関して汚くもまあ全うなことをしている会社側の主張に、私自身賛同できたので、ミジャの行動は少しエゴにすら感じた。
しかし、最後にミジャがとった行動は「買収」だった。これが上手い。会社の悪い点をもっと盛大に暴露して会社を崩壊させオクジャを奪う展開もこの手の話ならあり得たろう。しかし彼女はより現実的な方法でオクジャのみを救うのだ。現実を見ずにエゴを通した子どもではない。本編を観ていると本来嫌がりそうな「商品として」の扱いをとるのだ。
実際これが一貫しているのが凄くて、そもそもこの金のブタがその買取のお金であるし、そのときの目標をそのまま通したことだ。(なら最初からやっとけとも思わなくはない)
だからこそ、あれだけ大量にいたスーパーピッグは見捨てざるを得ないし、ミジャはそれを救おうとまでは奮闘しない。

最後の解決法の皮肉ぷり、全編通してのミジャとオクジャの関係に非常に面白さを感じた一本。
ジェイク・ギレンホールのイカレっぷりもよく(もう少し最後の扱いなんとかしてほしかった)、動物愛護団体の皆さまも素晴らしい存在感だった。

ただ個人的に「子どもが自分を通して大人が振り回される」という作品にあまり気持ちよさを感じないということ、そもそも食用ビジネスなのに、というモヤッと感、一匹盗んじゃったのはどうなんだ問題、
いろいろと賛同できない点はあったかなと。
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