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オクジャ okjaの教授のレビュー・感想・評価

オクジャ okja(2017年製作の映画)
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ひとまずポン・ジュノ監督の長編作品のラスト。Netflix配信作品で、PLAN Bの製作。
「スノー・ピアサー」のティルダ・スウィントンに、ジェイク・ギレンホール、ポール・ダノとなかなか絶妙なキャスト陣。

と期待させる内容に反して、非常に「欺瞞的」な映画…に見える。

幼少の頃から、共に成長してきた(作中では遺伝子操作された「豚」)のオクジャを巨大資本の多国籍企業から守る…というストーリー。
しかし、そこには普段の食事「何を食べて生きていくか」という問題があり、主人公であるナジャは魚は食べるのか?とか。
じゃあ果物や、野菜なら良いのか?とか。
色んなことを考えさせてくる割に、その辺りへの言及はほぼない。

そこにやや「ヴィーガン」っ気もある「ALF」というエコテロリズムの話が挟み込まれてくる。
そんな中にも、ジェイク・ギレンホール演じるところの気が弱く、鬱憤を晴らす為に虐待的行為に及んでしまう動物学者(?)やティルダ・スウィントンの上には上がいる巨悪。

更にそれを「金で解決する」という開いた口が塞がらない展開に唖然としてしまう。

しかし、よくよく考えてみるとその「欺瞞的展開」こそがポン・ジュノ監督が本作で浮かび上がらせようとしたことなのだと思う。
高度な資本主義社会の中で、文明とは切り離しては生きていけない現状の中では、「正しさ」など見つけられない。
自分にとって大切なものを守る、ことも現実にはままならず、それが叶ったとして、結局は自分が染まりたくないものと同等の取引を強いられるのだ。

本作で言えば、そもそもが「食われる為に育てられた家畜」であり、その他の豚たちは屠殺され食べられる運命であり、オクジャだけが助かったとて何の解決にもならない。
エコテロリストたちが理想を掲げて暴れまわったとしても…それはそれで彼らのエゴでしかなく。
問題は問題のまま、解決せずに意地悪にも、故郷に戻ったナジャとおじいちゃんの食事のシーンで終わる。

そして…そこで食べているものはおじいちゃんの背中に隠れて映っていないわけで。
「良い話」の雰囲気を纏いつつ、確信犯的に、感じの悪い物語として幕を閉じる。
これもまた、投げ掛けられた問題としてつくづくポン・ジュノ監督は政治的であり、社会派監督である。
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