かめろんでぃあす

オクジャ okjaのかめろんでぃあすのネタバレレビュー・内容・結末

オクジャ okja(2017年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

基本的に、映画に対して何を重視するのかで、この作品への評価は大きく変わるだろう。
この映画は、そして、この監督は風刺映画的な部分が多くあり、メッセージ性の強い映画であると思う。なので、物語自体はファンタジーによったフィクションであり、リアルさや、飛躍というのが度々起こる。ただ、そこを我慢できる視聴者に対しては、現実に起きている事柄に問題提起をし、視聴者にそれを考えさせることには成功しているのかなと。
この作品では、食品生産・消費が主な題材。簡単に言えば、人間が操作し、命が商品として扱われる事を見過ごしていいのかということだろう。資本主義の中で、あらゆるものが商品化され、恣意的に価値をつけられる。命さえも。そうした思想に極端に毒されているのが、ミランド姉だろう。彼女は、オクジャは肉商品のためだけのものであり、追求すれば、その対価としての金のためだと言及する。それに対し、主人公に見られるオクジャに対する接し方は、家族としてのそれであり、命を人間の命同等として見る見方である。 そこには、明らかに命の商品化への風刺がある。
さらに個人的には、ペットと家畜の違いって何なのだろうと考えさせられる部分もあった。主人公は最後、精肉工場から、オクジャを買い取り連れ戻すのだが、その際に他のオクジャ達は連れていけない。彼女が連れて行くのは「彼女の」オクジャであり、彼女が一緒に暮らしたオクジャである。それは、ペットの感覚に似ている。現実にもミニブタがペットとして人気になってきているが、その豚と、商品化している豚に何の違いがあるのだろうか。何の違いもないはずであるのに、ぼくらのそれぞれへの接し方は全く違う。食卓に並ぶ豚肉と、足元でペットフードを食べているミニブタへの愛情や感謝は全く違うのだ。それは許されることなのであろうか?そういったメッセージを、個人的には強く感じた。
そういったメッセージがありつつも、穴だらけのプロットは、やはり穴だらけである。主人公は少女なのに、驚くべきほどタフで、強い。最強のセキュリティ部隊を持つ会社の精肉工場に何故かするすると入り込む少女。動物愛護団体なのだけれど、オクジャにしか興味がなく、他のオクジャに見向きもしない団体。みるからに穴だらけではある。こういった映画はあまり好まないが、メッセージ性としては強いものは感じたので、好まないなりに高めの評価。
そしてなにより、韓国の監督が、英語作品をしつつ、韓国人をそこで起用するなどの、自国の俳優や女優の背中を押そうとしている(そうなのかはわからないが)ところは、日本の監督も踏襲してみる価値があるのではと思い、日本映画の未来のヒントにもなるような監督作品であった。