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花芯のamuのレビュー・感想・評価

花芯(2016年製作の映画)
1.9
私は社会人になってから、友人の影響で近代日本史に興味を持った。近代とは要するに日本が戦争をしていた時代、またその前後である。

私はそれまで日本人は、本気で「お国のため」と思って戦争に行っているのだと思っていた。北朝鮮が国民を洗脳させているのと同じように、自国のために命を捧げることに嫌だとか怖いとか行きたくないなんて感情は湧くわけないほど洗脳させられ、日本も国民の感情をコントロールしていたのかと狂気に感じていた。

ところが、そうでは無かった。
当たり前に、嫌だし怖いし行きたくなかったのだ。言えない時代だっただけで人の感情は今も昔も変わらなかった。行きたくなくて醤油を飲んで徴兵を逃れる話くらいは聞いたことがあったが、もっと感情的な部分(好きな人と離れたくない!等)を映画などで表現されるようになるまでは随分かかったようだ。嫌なものを嫌だと言ったら非国民だと罰を与えられるような時代。そんな時代に、性欲は女にもある!なんて、戦争に行きたくないよ!くらい非国民的なことだったのだろう。

戦後とはいえ、まだ女というものはこう!みたいなイメージが強かった頃にこの作品を執筆した瀬戸内寂聴がその後しばらく文壇から干されたというのも、また今の日本とは異なる当時の独特さを感じる。

あいつらは自由恋愛じゃん?と、作中でも流行と称して時代がマイナーチェンジしていく。歴史はどんどん変わる。

とはいえ今作を観て感じたのは、文学的に語れば女の性欲も美談になるだろう、というのとはちょっと違う気がした。だって主人公はただ性欲が強いだけの冷徹ぷり。好きじゃない人とでまぁまぁ気持ちいいから、好きな人とだったらどんだけだよ!と思ったのに、あれあんまり変わらないのか愛なんていらねぇよ、夏。ていう。

やりたいこと全部やったら全部失って、性欲の最たるところを悟っちゃったら、もうあと出家するしかねーなーと思ったのかな。出家のタイミング知らないですけど。

それを、え!あの人が!という女優を脱がせて、ちょっと美しいものっぽく映画にしてみました!っていうのが、今の時代なんでしょうか。
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