ポルりん

バンビの息子、ゴジラに会うのポルりんのレビュー・感想・評価

1.3
前作以上にプロダクション・バリューが低いブタのチンカスのような作品。


本作では東宝のゴジラではなく、エメリッヒのイグアナゴジラと前作で踏み殺されたバンビの息子が対峙(?)する。
そして前作の単純な白黒の線画とは異なり、本作ではフルカラーでしかも3Dポリゴン描画として描かれている。
一応、映像技術の進化を垣間見れる事も出来るのだが、伝説のクソゲー「修羅の門」以上にグラフィックが酷い。
イグアナゴジラは辛うじてイグアナゴジラと認識する事が出来るのだが、バンビに至ってはバンビと言われなければとても認識出来るものではない。
タイトルを伏せて本作を鑑賞したら、大半の人は野生のブタかイノシシと勘違いするのではないだろうか・・・。
映像技術としては本作の方が上だが、前作の単純な白黒の線画の方が味があり親しみやすいので、個人的には前作の方が好みである。

そして、前作はプロダクション・バリューが低く、モラルセンスが問われる上に、全く無意味なバイオレンスと酷い作品ではあるが、色々と考えさせられる面はある。

・ベトナム戦争の長期化によるアメリカ経済の悪化やインフレ、国際収支の悪化に伴うアメリカ政府への不信感に対するメタファー。
・反戦のメッセージ
・日米安保条約を結んでいるにも関わらず、ゴジラに対して何一つ行動しないといった、日本防衛に対する姿勢が著しく欠如しているアメリカ政府と米軍への怒り。
・数年前(1960年前半)に起きた日本国内での反米感情の高まりのメタファー。

など、短いながらもなかなかにメッセージ性のある作品となっている(製作陣が意図したかどうかは分からないが・・・)。


対して本作はアイデアも二番煎じで面白みもない・・・。
あるとしたら、エメゴジへの痛烈な批判だけである。
確かに私もエメゴジは嫌いである。
「ゴジラ(1954)」は核戦争と核がもたらす手に負えない恐怖と体現した怪獣となっているが、エメリッヒのイグアナゴジラは、怪獣にも見えないし、伝説の神的存在でも、復讐に燃え、観る者の良心をぐらつかせる想像の産物でもない。
そして、核のメッセージやシンボルでもない。
無用で迷惑な侵入者で建物の土台に潜むシロアリ、もしくは食器棚に隠れるゴキブリと同様の汚らしい害獣である。
そしてその害獣は子供たちヒーローでもなく、単なる巨体で、ひきこもりがちな食欲旺盛な子作りマシーンだ。
非常に不愉快な存在であるが、大して脅威を与える存在ではない。
このような可燃物を製作した事に怒りを露わにするのも分からない事もない。

てめぇを駆除するのに動く必要すらねぇーんだよ ( ゚Д゚)ヴォケ!!

地下道をチョロチョロと巨大ネズミみたいに逃げ回りやがって ( ゚Д゚)ゴルァ!!

きめーんだよ、このドブネズミが ( ゚д゚)、ペッ

てめぇにマグロはもったいねぇー ヽ(`Д´)ノプンプン

金魚の死骸で十分だ ( ゚Д゚)ヴォケ!!


恐らくこのような憎悪を込めながら本作を製作したのだろう。
憎悪を込めるなら込めるで別に構わないのだが、もっとアイデアをしっかりと練り、ディテールをもっと細かく描いて欲しい所である。
とりあえずエメゴジを描くのであれば放射熱線に関することくらいはしっかりとして欲しい。
本作ではエメゴジがバンビもどきに向かって放射熱線を吐く場面があるが、劇中でエメゴジが吐いたのは放射熱線をではなく、ただの息もしくはゲップだ。
確かに放射熱線に近い描写はあったが、あれは連射性のゲップにより車が吹っ飛ばされ引火しただけだ。
本家ゴジラの放射熱線とは「ロマネコンティ(高級ワイン)」と「ブタの下痢」以上の差があるので一緒にしないでほしい。

個人的には前作以上にプロダクション・バリューが低いブタのチンカスのような作品と思うのだが、中には浅薄なだけで全く深みがなく感情や機知が著しく欠如したエメゴジを体現した素晴らしい作品だと思う人もいるだろう。
ポルりん

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